日本薬剤師会は、7月22日、「規制・制度改革に係る追加方針」の閣議決定で見解を発表しました。
発表された見解は次の通りです。
本年4月8日の閣議決定以降、政府においては一層の規制・制度改革を進めるべく、与党を含めた議論が進められ、「一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和」及び「調剤基本料の一元化」という、今後の薬剤師業務に大きな影響を及ぼす事項が、引き続き議論の俎上に乗せられました。
本日、「規制・制度改革に係る追加方針」が閣議決定され、公表されたことを受け、本会では下記のとおり見解を表明します。
1.一般用医薬品のインターネット等販売規制の緩和について
本会では従来より、「医薬品の販売にあたっては、リスク分類の別に関わらず、対面での販売が消費者の安全・安心な一般用医薬品の使用には不可欠なことである」として、薬事法で定める範囲、すなわち第三類医薬品以外の非対面販売を可能とする規制緩和には反対の立場を貫いてきました。
今回閣議決定された方針を見ると、「安全性を確保する具体的な要件の設定を前提」としつつも、「第三類医薬品以外の薬局・薬店による郵便等販売について、当面の合理的な規制のあり方を検討する」とするなど、郵便等販売を可能とする規制緩和の方向性が示され、全体として購入者の利便性に力点を置いた内容となっています。
本会ではこれまで、違法性のある薬物までもが売買されている現在のインターネット環境で、生命関連商品である医薬品が販売されることの危険性を一貫して指摘してきました。このことは、薬害被害者の方々や消費者団体等も懸念されているところであり、安全性より利便性を優先させる「一般用医薬品のインターネット等販売の規制緩和に反対する署名運動」には540,278人の方々が賛同し、署名を寄せていただきました。また、WHOが進める「にせ薬対策」では、インターネット販売が「にせ薬」の蔓延を助長する恐れがあるとして、国際的な課題として位置付けています。
このような観点から今回の方針を見ると、国民・消費者に安全に医薬品を使用できる環境の確保を軽視するものと言っても過言ではなく、医薬品を扱う者としては到底容認できるものではありません。
本会としては、平成23年度に開始される検討の場で、医薬品の安全かつ適正な使用には「薬剤師などの専門家による対面での販売」が最も合理的な方法であることなど、必要な主張を引き続き行っていく所存です。
なお、本会は本年2月23日に、薬剤師が購入者の自宅へ一般用医薬品を届け、情報提供できるよう改正薬事法の運用を見直すことについて、厚生労働大臣宛に要望書を提出しています。今回の方針では「その他の工夫も含め検討する」とされていますが、いわゆる買い物弱者等への対応は、インターネット販売ではなく、薬局・薬店の薬剤師が購入者の自宅へ届けることが認められれば、利便性にも配慮した上で、安全・安心に対応できると考えます。
2.調剤基本料の一元化について
本会では従来より、「例外である1%の薬局の調剤基本料(24点)に99%の薬局の調剤基本料(40点)を合わせることは、地域薬局の維持に多大な影響を与えることとなり、地域の医薬品提供体制を崩壊させることが懸念される」と主張してきました。
調剤基本料の一元化が、本年4月の閣議決定以降、再度議論の俎上に上がりながら、今回の閣議決定にまでに至らなかったことは、本会の主張が認められたものと理解しています。
そもそも、診療報酬・調剤報酬の個別の点数に係る検討は、中央社会保険医療協議会(中医協)に委ねられるべきものです。中医協では様々な調査とその結果に基づき、支払側と診療側が議論を尽くした結果、我が国に必要な医療提供体制を維持・確保するための諸点数を定めており、個別の点数について閣議で決定する措置は、診療報酬の決定プロセスに照らしても馴染まないものと考えます。
しかしながら、閣議決定にまでは至らなかったものの、一時的とはいえ今回のような指摘を受けたことは、保険調剤に対する国民の理解を得るための努力が不足していたものと真摯に受け止めております。
引き続き日常業務のより一層の充実を目指すとともに、今後、中医協の場で患者・国民に分かりやすく、かつ薬剤師の業務が適切に評価される調剤報酬体系の実現に向け、議論を進めて参る所存です。
http://www.nichiyaku.or.jp/