日本医師会は、11月15日、厚生労働省に風しんに係る予防接種の早急な実施等を要望する文書を提出しました。
本年7月以降、5都県を中心として、風しんの届出数が増加している問題で、これまでの厚生労働省のワクチン行政を批判するとともに、ワクチンの接種機会のなかった全ての人々に対して、早急に予防接種の実施が可能となるよう更なる対策を講じることを求めるものです。
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本年7月以降、5都県(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県及び愛知県)を中心として、風しんの届出数の増加が続いている。
貴省においては、先天性風しん症候群(CRS)を防ぐ観点から、5都県に対して、妊婦や妊娠を希望する女性及びその同居家族に対する抗体検査の実施、また、抗体価が低いことが判明した者に対し、優先的に任意接種を行うことを求めるとともに、任意接種分のMRワクチンの追加供給を行うなどの対策を講じているが、地域医師会からはMRワクチンの不足を指摘する声も聞かれ、このままでは5都県以外への更なる感染拡大が懸念される。
さらに、このような状況を受け、すでに日本への渡航自粛を呼びかける国も出ており、来年のラグビーW杯、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催への影響を考えれば、わが国は、風しんの感染拡大防止、さらには風しん根絶に向けた抜本的な対策が求められる。
今般の感染拡大は、1977年から1995年の間、ワクチンの接種機会を女子中学生に限定したことにより、定期接種として風しん含有ワクチンの接種機会がなかった、あるいは接種率の低かった30代から50代の男性を中心としたものである。
これは、貴省において、従前、風しんの流行を防ぐため、上記の者に対する対策の必要性を認識していたにもかかわらず、何ら有効な手立てを講じてこなかったことが原因であり、ワクチン行政の怠慢といわざるをえない。
日本医師会は、上記の者を含む風しんに係るワクチンの接種機会のなかった全ての者に対し、必要かつ十分なMRワクチンの供給量を確保し、早急に予防接種の実施が可能となるよう更なる対策を講じることについて、強く要請する。
2018/11/21(水) 15:11
公益財団法人日本医療機能評価機構は、11月15日、医療事故情報収集等事業
医療安全情報No.144「病理検体の未提出」を提供しました。
検体を採取後、紛失や破棄などにより、病理検査に提出されなかった事例が19件報告されている(集計期間:2014年1月1日~2018年9月30日)ことから、第23回報告書「個別のテーマの検討状況」で取り上げた内容をもとに作成したものです。
件数と主な背景は、紛失が11件(手術室での病理検体の取り扱いについての手順がなく、診療科ごとに提出方法が異なっていた。病棟での病理検体の置き場所が決められていなかった。)、破棄が5件(医師は、検体が病理検査に提出されていると思い込み、提出したか確認しないまま看護師に破棄するよう伝えた。手術室に病理検体を保管するための容器がなく、採取した検体をトレイに入れた状態で置き忘れ、翌日破棄された。)、他の検査のみ提出が3件(外科医師が採取した検体を受け取った内科医師は、外科医師が病理検査に提出したと思い込み、病理以外の検査に提出した。)というものです。
事例1:骨生検後、医師は病理検体とラベルを病棟看護師に渡した。看護師は病理部へ検体を提出しようとしたが、すでに受付時間が過ぎていた。そのため、検体を病棟で保管することになったが、置き場所が決められていなかった。その後、病理検体をどう扱ったかは不明であるが、1ヶ月後、医師が骨生検の結果を患者に説明する際に結果が出ておらず、病理検体が提出されていなかったことに気付いた。
事例2:下垂体腫瘍摘出術を施行した。通常、腫瘍が摘出されると脳神経外科医師が病理検査に提出していたが、手術当日は検体を処理する医師が手術室にいなかった。手術終了後、器械出し看護師は執刀医に腫瘍の処理を確認したところ、執刀医はすでに検体が病理検査に提出されていると思い込み、破棄してよいと伝えた。看護師は、腫瘍を破棄してよいか疑問に思ったが全て破棄した。1週間後、医師が検査の結果が遅れていると思い問い合わせたところ、病理検査に提出していないことがわかった。
<事例が発生した医療機関の取り組み>
・手術終了後に病理検体の有無、個数、組織名を確認する。
・病理検体の置き場所を決め、検体を提出する手順を作成する。
https://jcqhc.or.jp/
2018/11/16(金) 15:46
厚生労働省は、11月9日、「ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)」に関する周知・啓発のためのオリジナル漫画の作成を発表しました。
「ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)」の認知拡大と理解促進を目的にオリジナル漫画を作成し、ウェブサイトやSNSなどを通じた情報発信を行うもの、より多くの国民に「HTLV-1」について知ってもらうために、11月9日から厚生労働省ウェブサイトでダウンロードが可能です。
厚生労働省では、今回の企画を通じて、多くの国民に「HTLV-1」について知ってもらえるよう期待しています。
「HTLV-1」は、血液中にあるリンパ球に感染するウイルスで、感染者は全国で約82万人いると推定されています。しかし、このウイルスに感染しても、その殆んどの人が生涯病気を発症しないため、疾患そのものへの関心が持たれにくいという現状がありますが、発症した場合、リンパ球ががん化する病気「成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)」や、歩行障害や排尿障害を引き起こす脊髄の病気「HTLV-1関連脊髄症(HAM)」になる可能性があります。また、医療従事者の間でも「HTLV-1」の認知度は低いため、HTLV-1関連疾患である「ATL」や「HAM」の診断が遅れてしまうことがあります。
厚生労働省は、「今後、更なる感染者を増やさないためには、若者から中高年までの幅広い層に向けて、このウイルスに関する正しい認知を広めるとともに、母子感染などの予防可能な感染症を確実に防ぐための取り組みが必要」としています。
■HTLV-1啓発オリジナル漫画ダウンロード先
【厚生労働省HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)に関する情報】http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou29/
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02240.html
2018/11/12(月) 16:20
厚生労働省は、11月8日、医薬・生活衛生局医薬安全課及び監視指導・麻薬対策課の連名で、各都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部(局)宛に、「乾燥BCGワクチン(経皮用・1人用)の添付溶剤の品質」について事務連絡を発しました。
日本ビーシージー製造株式会社(BCG社)が製造販売する乾燥BCGワクチン(経皮用・1人用)の使用時にワクチンを溶解するための溶剤(0.15ml)中に、承認書で記載している日本薬局方における生理食塩液の規格値を超えるヒ素が検出されたことを受けて、今般、平成30年度第9回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会において、ヒソの曝露による健康への影響評価及び今後の対応について議論された内容をとりまとめたもので、管内関係団体、関係医療機関などへ周知するよう求めています。
1. 生理食塩液に含有されるヒソの曝露による健康への影響評価について
問題となっているアンプル容器が使用されている生理食塩液が添付された同製品は以前より使用されていたが、生理食塩液0.15ml中のヒ素の濃度(日本薬局方生理食塩液の規格値(0.1ppm以下))が0.11~0.26ppmのワクチンを接種した場合、ICH Q3D「医薬品の元素不純物ガイドライン」でのヒ素(注射)の許容一日曝露量は15㎍/day(体重50㎏換算)であることから、仮にアンプル容器中のヒ素が全量体内に入った場合でも、ワクチン接種対象児の体重(5~10㎏)換算で、許容一日曝露量の約1/38~1/77となるため、安全性に問題ないレベルと評価された。
2. ヒ素が検出された原因及び対策について
BCG社による原因究明の結果、ヒ素が規格値を超えたのは、アンプル容器にヒ素が含有されており、生理食塩液をアンプル容器に充填した後、熱をかける工程(熔封)でヒ素がアンプル容器から溶け出て、生理食塩液へ混入したためと判明した。
当該事実の判明後、同社は市場への出荷を控えているが、11月中旬から下旬には材質を変更したアンプル容器を用いた生理食塩液(ヒ素の濃度が規格値以下であることを確認済み)を添付した製品への切り換え、交換を速やかに行うよう同社に対して指導している。
3. 今後の対応について
今後の製品については、最終製品中の生理食塩液のヒ素の濃度を確認することによって品質を確保するようBCG社に対して指導した。
2018/11/09(金) 15:10
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカルカンパニーは、11月5日、バーチャル・リアリティ(VR)と人工知能(AI)による人材育成ソリューションを開発する株式会社ジョリーグッドと、医療研修VRについて共同開発することを発表しました。第一弾は不整脈治療のカテーテル手術のVR化です。
医療研修VRは、ジョリーグッドが提供する人材育成ソリューション「Guru Job VR」(グルジョブ・ブイアール)を医療従事者向けに開発したもので、その第一弾として、不整脈の一種である心房細動の名医による手技をVR化しました。今回、メディカルカンパニーのバイオセンスウェブスター事業部の疾患領域となる不整脈の診断及び治療を支援する機器「CARTO 3」(カルトスリー)を用いて、「カテーテルアブレーション治療」を高精度360度カメラで撮影。主に手術室のスペースの都合から、医師の見学人数に上限がある手術の現場を360度映像化することで、遠方の医療機関でも、実際の治療の現場にいるような臨場感がある医療研修を可能にします。
不整脈の一種である心房細動の患者数は、検診で診断される患者数だけでも約80万人と推計されており、潜在的な患者数も含めると、実際には100万人を超えると言われています。また脳梗塞をはじめとした合併症を併発するリスクもあることから、早期診断と治療が必要とされています。その治療法の1つである「カテーテルアブレーション治療」は、治療時間の短さや傷の小ささから患者への負担も軽く、一回の治療で治せる可能性がある治療法です。
実際の治療の現場では、限られた人数しか見学できないため、名医の技術を伝えることが難しいとされ、医療現場での手技の浸透に時間を要することが課題となっていました。今回の医療研修VRでは、実際の治療を行う医師と同じ視点で手術を体験することができ、名医が監修する解説とともに手技を学ぶことができ、それにより技術向上だけではなく、研修にかかるコストや時間の軽減が可能となります。
<医療研修VRの特徴>
・実際の治療を行う医師による手術を、解説とともに真横で見ることができる。
・症例のプライバシー保護対策や、衛生対策において行き届いた配慮が可能。
・時間、移動、費用面でのコストが大幅に抑えられる。
・何度でも繰り返し見ることができ、技術習得を効率化。
両社は、今後も様々な医療現場を高精度VR化し、医療業界におけるVR研修、技能実習への活用を共同で研究開発していきます。
2018/11/06(火) 16:01
日本医師会は、10月31日の記者会見で在外日本人医師向け支援サービス「日本医師会ワールドメンバーズネットワーク」(JMA World Members Network:JMA-WMN)の開始を発表しました。2018年度内のサービス開始を予定しています。
目的は、(1)在外日本人医師向けに最新の医学知識や日本の医療・医師会活動に関する情報提供を行うサービスを新たに開始することで、海外で活躍する医師らの活動を支援する、(2)当該サービスの運営に、在外日本人医師らが組織する団体の協力を仰ぐなかで、世界の医療動向等の情報を双方向で共有できるよう密接な関係を構築し、もってグローバル・ヘルスを主軸とした日本医師会の国際活動を推進していく、というものです。
◇在外日本人医師らによる主な団体
○欧州日本人医師会
2006年発足。2017年現在会員数は14ヵ国に約50名。会の目的は1)在欧州邦人医療支援を最善にするため会員間の情報交換及び患者紹介、2)政府、会社、団体などへの会議、交渉支援、3)欧州医療事情の紹介、4)次世代を担う医師に対する支援
○米国日本人医師会
1973年、ニューヨークの医療関係者によりNPOとして設立。会員数は約400名。日系又は日米の医療交流に深く関心を持つ北米の医師(大学病院の勤務医と開業医の両方が会員)、歯科医師、看護師、研修医、学生などで構成。日米医学会の交流、地域医療サービスの支援、医師紹介ネットワーク等を提供している。
◇JMA World Members Network(JMA-WMN)
○サービス内容
在外日本人医師向け支援サービス(JMA-WMN)専用ページを、新たに日本医師会ホームページ内に設ける。利用者は、メンバーズルームを含む日本医師会ホームページ内の全ての情報にアクセスすることができる。
○在外日本人医師らによる団体との連携強化
本サービスの運営を通じて、欧州日本人医師会並びに米国日本人医師会との連携を密にし、世界の医療動向等に関する情報を双方向でやり取りするなど、関係の深化を図っていくことで、日本医師会における国際活動の一層の推進を図る。
サービス開始後は、運営に協力いただく在外日本人医師の団体を増やしていくことも検討。
http://www.med.or.jp/
2018/11/05(月) 12:31
厚生労働省は、10月30日、「要指導医薬品として指定された医薬品」について事務連絡を発しました。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第4条第5項第3号の規定に基づき厚生労働大臣が指定する要指導医薬品の一部を改正する件が同日告示され、フルニソリド(販売名:ロートアルガードクリアノーズ季節性アレルギー専用)が要指導医薬品として指定されたものです。
2018/11/01(木) 15:32