病理検体の未提出で医療安全情報提供 医療機能評価機構
公益財団法人日本医療機能評価機構は、11月15日、医療事故情報収集等事業
医療安全情報No.144「病理検体の未提出」を提供しました。
検体を採取後、紛失や破棄などにより、病理検査に提出されなかった事例が19件報告されている(集計期間:2014年1月1日~2018年9月30日)ことから、第23回報告書「個別のテーマの検討状況」で取り上げた内容をもとに作成したものです。
件数と主な背景は、紛失が11件(手術室での病理検体の取り扱いについての手順がなく、診療科ごとに提出方法が異なっていた。病棟での病理検体の置き場所が決められていなかった。)、破棄が5件(医師は、検体が病理検査に提出されていると思い込み、提出したか確認しないまま看護師に破棄するよう伝えた。手術室に病理検体を保管するための容器がなく、採取した検体をトレイに入れた状態で置き忘れ、翌日破棄された。)、他の検査のみ提出が3件(外科医師が採取した検体を受け取った内科医師は、外科医師が病理検査に提出したと思い込み、病理以外の検査に提出した。)というものです。
事例1:骨生検後、医師は病理検体とラベルを病棟看護師に渡した。看護師は病理部へ検体を提出しようとしたが、すでに受付時間が過ぎていた。そのため、検体を病棟で保管することになったが、置き場所が決められていなかった。その後、病理検体をどう扱ったかは不明であるが、1ヶ月後、医師が骨生検の結果を患者に説明する際に結果が出ておらず、病理検体が提出されていなかったことに気付いた。
事例2:下垂体腫瘍摘出術を施行した。通常、腫瘍が摘出されると脳神経外科医師が病理検査に提出していたが、手術当日は検体を処理する医師が手術室にいなかった。手術終了後、器械出し看護師は執刀医に腫瘍の処理を確認したところ、執刀医はすでに検体が病理検査に提出されていると思い込み、破棄してよいと伝えた。看護師は、腫瘍を破棄してよいか疑問に思ったが全て破棄した。1週間後、医師が検査の結果が遅れていると思い問い合わせたところ、病理検査に提出していないことがわかった。
<事例が発生した医療機関の取り組み>
・手術終了後に病理検体の有無、個数、組織名を確認する。
・病理検体の置き場所を決め、検体を提出する手順を作成する。