下肢閉塞性動脈硬化症患者の弾性ストッキング着用で医療安全情報 日本医療機能評価機構
公益財団法人日本医療機能評価機構は、7月15日、医療事故情報収集等事業
医療安全情報No.188「下肢閉塞性動脈硬化症の患者の弾性ストッキングの着用」を提供しました。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者に弾性ストッキングを着用させた事例が7件報告されています(集計期間:2018年1月1日~2022年5月31日)。そのうち6件は、着用後に下肢に虚血症状を生じています。この情報は、第48回報告書「個別のテーマの検討状況」で取り上げた内容をもとに作成しました。「下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)の患者に弾性ストッキングを着用させ、影響があった事例が報告されています。」
<弾性ストッキングを着用させた主な背景>
患者のASOの把握不足:医師・看護師は診療録を確認しておらず、患者がASOであることを把握していなかった。
知識不足:医師・看護師は、ASOの患者が弾性ストッキングを着用することのリスクを知らなかった。看護師は、ASOの患者に弾性ストッキングの着用が禁忌であるという知識がなかった。
着用の可否の未検討:医師・看護師は、弾性ストッキングの着用の可否を検討していなかった。看護師は、術前は弾性ストッキングを着用させると思っていた。
事例1:初療を担当した救急科の医師は、救急搬送された患者にASOがあることを把握し、診療録に記載した。入院後、消化器科の主治医は初療時の診療録を把握しておらず、弾性ストッキングの着用を指示した。看護師も、初療時の診療録を確認しておらず、患者に弾性ストッキングを着用させた。3日後、患者が足の痛みを訴え、確認したところ足趾の付け根に発赤を認めた。
事例2:内科主治医は、患者に左下肢深部静脈血栓症を認めたため循環器科にコンサルトした。その際、患者がASOであることを伝えなかった。循環器科医師は、弾性ストッキングを着用させるよう回答した。主治医・看護師は、ASOの患者が弾性ストッキングを着用することのリスクを知らず、着用させた。4日後、看護師が患者の左下肢の皮膚が暗赤色となっていることに気付いた。
<事例が発生した医療機関の取り組み>
・医師・看護師は、患者に弾性ストッキングを着用させる前にASOの既往がないか確認する。
・医師・看護師は、弾性ストッキングの添付文書の【警告】【禁忌・禁止】を確認し、着用の可否を検討する。