医療機関における外国人患者受入実態調査の結果を公表 厚生労働省
厚生労働省は、3月27日、「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果を公表しました。
我が国の訪日外国人旅行者は年間約3,119万人(2018年)、在留外国人は約263万人(2018年6月)と、近年著しい増加傾向にあります。
政府においては、内閣官房健康・医療推進本部(本部長:内閣総理大臣)が「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に関するワーキンググループ」を開催し、2018年6月に「訪日外国人に対する適切な医療等の確保に向けた総合対策」を取りまとめました。
同総合対策に基づき、各都道府県の衛生主管部(局)と観光部(局)が連携し、地域の関係者の協力を得つつ、課題の解決に向け積極的に取り組むことが重要と考えられ、その際、外国人に対する医療提供体制の現状を把握する必要があることから、厚生労働省において全国の全ての病院と一部の都道府県の診療所を対象とし、医療機関の外国人患者受入能力向上のための基礎資料を得ることを目的として実態調査を実施しました。
調査は、A医療機関における外国人受入体制の把握(医療通訳の配置状況、タブレットの利用状況など)、B医療機関における外国人患者の受入実績の把握(患者数、未収金など)、C周産期医療に係わる外国人患者受入の現状の把握の3調査で、全国全ての病院と沖縄県・京都府の診療所(歯科診療所を含む)を対象とし、調査Cは地域周産期母子医療センター及び総合周産期母子医療センターのみを対象としました。
主な調査事項は、調査票A:医療通訳の配置状況、マニュアルの整備状況、医療コーディネーターの配置状況、院内表示の状況、タブレットの利用状況、外国人患者への診療費請求方法、調査票B:外国人患者数、未収金発生件数、未収金となった各事例の状況、調査票C:母体について(分娩数等)、訪日外国人が分娩した新生児について、です。
調査期間・回収率は、病院A(9月3日~9月28日):対象医療機関数8,417、回収数5,611、回収率66.7%、病院B(9月3日~12月14日):対象医療機関数8,417、回収数3,980、回収率47.3%、病院C(9月3日~9月28日):対象医療機関数406、回収数318、回収率78.3%、診療所A(10月26日~11月14日):対象医療機関数5,240、回収数1,082、回収率20.6%、診療所B(10月26日~1月14日):対象医療機関数5,240、回収数901、回収率17.2%。
○外国人患者の受入実績:都道府県を通じて全ての病院に調査を依頼したところ、3,980病院(約47%)より回答を得た。2018年10月1日~31日の外国人患者数を前向きに調査したところ、1,965病院(約49%)で外国人患者の受入があった。外国人患者の受入実績のあった病院において、外国人患者数が1ヶ月間で10人以下であった病院が多いものの(1,062病院)、1,000人以上受入のある病院も10病院あった。
○多言語化(医療通訳・電話通訳・自動翻訳デバイス等)の整備状況:都道府県を通じて全ての病院に調査を依頼したところ、5,611病院(約67%)より回答を得た。外国人患者の受入体制は、医療圏を単位として"面的"にネットワークとして構築すべきであることから、2次医療圏ごとに見てみると、①医療通訳者が配置された病院がある2次医療圏は125医療圏(37.3%)、②電話通訳(遠隔通訳)が利用可能な病院がある2次医療圏は161医療圏(48.1%)、③タブレット端末・スマートフォン端末等の利用可能な病院がある2次医療圏は168医療圏(50.1%)、①②③のいずれかが利用可能な病院がある2次医療圏は233医療圏(69.6%)。回答率が約67%であることから、多言語化の実態はこれらの数値より高い可能性がある。
○訪日外国人旅行者に対する診療価格:訪日外国人に対する診療価格を設定する際に、ほぼ全ての病院において、診療報酬点数票を活用した倍数計算(1点=00円として換算)を行っていた。有効な回答(n=4,899)のうち、訪日外国人旅行客への診療価格として、90%の病院は1点あたり10円(または消費税込みで10.8円か11円)としていた。外国人患者受入が多い病院(n=178)に限ると、61%の病院が1点あたり10円(または消費税込みで10.8円か11円)としているものの、27%の病院が1点あたり20円以上で請求していた。
○医療通訳の費用:訪日外国人旅行者に対して、診療費以外の追加的費用として、通訳料を請求している病院の割合は約1%であった。(外国人患者の受入が多い病院(n=178)に限ると、通訳料を請求している病院の割合は約10%であった)※医療通訳の費用は、自由診療だけでなく、社会保険診療においても、医療機関は患者に請求可能である。
○未収金の発生状況:本調査において、未収とは「請求日より1ヶ月たっても、診療費を全額が払われていないこと」とした。2018年10月1日~31日に外国人患者の受入実績のある1,965病院において、372病院(18.9%)が外国人患者による未収金を経験していた。未収金があった病院をみてみると、病院あたりの未収金の発生件数は平均8.5件、総額は平均42.3万円であったが、総額が100万円を超す病院もみられた。
○周産期母子医療センターにおける分娩:全国の地域周産期母子医療センター、総合周産期母子医療センター(n=406)より、318センター(78.3%)から回答を得た。有効な236センターからの回答のうち、10センター(4%)において、2017年4月1日~2018年3月31日に訪日外国人旅行者の分娩が報告された。分娩数は、センターあたり1~3分娩であった。それらの分娩例のうち、費用の未収金に至った事例もあった。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000173230_00001.html