2型糖尿病患者の薬物療法の負担感と満足度に関する調査 奈良県立医科大学と日本イーライリリーが実施
奈良県立医科大学と日本イーライリリーは、5月22日、「2型糖尿病患者の薬物療法の負担感と満足度に関する調査:DTBQの開発と試験結果」を発表しました。糖尿病治療薬の投与頻度と患者負担の相関関係が浮き彫りになっています。
奈良県立医科大学は、日本イーライリリーの支援により、2型糖尿病患者の薬物療法の負担を測定するためのアンケート調査手法(Diabetes
Treatment Burden Questionnaire:DTBQ)を開発し、236名の成人患者を対象に糖尿病薬物療法の負担感と満足度に関する試験を実施しました。この結果は、論文として「Diabetes Therapy」に掲載されました。
近年、日本を含む世界の糖尿病患者数が著しく増加する中、糖尿病患者の血糖コントロール改善のため糖尿病治療も著しい進歩を遂げており、様々な治療薬や薬物療法が登場していますが、依然として血糖コントロールが改善されない糖尿病患者は多数います。
例えば、糖尿病データマネジメント研究会に登録された患者の経口血糖降下薬の併用状況を見ると、治療薬の種類が増えたことから、複数剤を併用する患者が増加している一方で、服用頻度が高ければ高いほど服薬コンプライアンスが悪い状況になっています。そんな中、昨今の糖尿病治療においては多くの治療薬・治療方法の存在を背景に、患者中心のアプローチが重視され、患者の意向や負担を考慮し、患者のライフスタイルに合わせた治療薬・治療方法の選択が望まれています。
現在、糖尿病患者が感じる負担を評価するための質問票として、PAID(Problem
Areas in Diabetes Survey)やDDS(Diabetes Distress Scale)が開発されていますが、これらの質問票は、糖尿病罹患に伴う負担を包括的に評価することができる一方、薬物治療に対して患者が感じている負担を抽出して評価することは難しくもあります。そこで今回、薬物療法に対する糖尿病患者の負担を評価するためのアンケート調査手法(DTBQ)を開発し、その検証を行いました。
本試験の解析の結果から、Cronbach's α係数が0.775~0.885であったことから各質問に対する回答の一貫性が示され、信頼性が示されました。また級内相関係数(ICC)が0.912であったことから、1回目の回答と2回目の回答の一致度が高いことが示され再現性に優れていることが判明しました。
なお、236人の患者のDTBQのトータルスコアを投与方法、投与回数別に見ると、週1回の経口薬の患者負担が最も低く、次いで1日1回の経口薬の服用、次に週1回の注射薬の服用の順となり、1日複数回の経口薬服用は患者負担が高いことが検証により明らかになりました。また、HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、HbA1c値が7.0%以上の患者の方が負担が重い結果となり、HbA1c値が高い患者の方が薬物療法における負担を感じていることが判りました。
合わせて、低血糖の経験のない患者よりも経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者の方が治療に対して負担を感じていることが判りました。投与頻度を見ると、注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスの良い患者は負担のスコアが低く、治療に対する負担が軽度であるという結果になりました。
この結果について、奈良県立医科大学糖尿病学講座石井均教授は、「2型糖尿病治療においては、患者さんの血糖値やHbA1c値、また薬物療法の効果のみならず、患者さんのライフスタイルを背景とした様々な治療負担を考慮して治療法を決定していくことが望まれます。本試験の検証により、糖尿病薬物療法の負担感と満足度に関するDTBQの質問票の信頼性と再現性が確認されました。今後、この結果は患者さんをより理解すること、その上で患者さんに合ったより良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」と述べています。
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