高齢者における白内障手術の認知症機能への影響判明 奈良県立医科大学が発表
奈良県在住の地域高齢住民を対象とした研究で、白内障手術の認知症機能への影響が解りました。奈良県立医科大学が5月1日に発表しました。
奈良県立医科大学眼科学教室(主任教授:緒方奈保子氏)は、奈良県在住の地域高齢住民を対象とした藤原京アイスタディを行い、白内障手術を受けた人では認知機能障害を生じにくいことが2018年2月20日付でPLOS ONE電子版に掲載されたことを公表しました。
藤原京アイスタディは、2007年から奈良県立医科大学疫学・予防医学講座(旧:地域健康医学講座)が奈良県在住の65歳以上の独歩可能な地域住民を対象として行っている「高齢者の生活の質(quality of life:QOL)と生活機能に関する大規模コーホート研究」(通称:藤原京スタディ)で、2012年から追加健診として眼科が参加し、眼科分野と全身因子との関連について藤原京アイスタディとして研究成果を公表しています。過去には2873名の対象者のうち80歳以上の対象者の約40%で白内障手術が施行され視力が改善していることや、視力障害があると認知症のリスクが約2倍高くなることを報告しています。
日本では65歳以上の15%が認知機能障害を生じているとされており、超高齢化が進む日本では、認知機能・視機能障害は医療コスト増大やQOL低下を引き起こし社会的問題となっています。以前に、奈良県立医科大学は視力障害が認知機能へ影響を与えることを報告していますが、白内障手術が認知機能へ与える影響は不明でした。本研究において、白内障手術を受けている患者さんのほうが軽度認知機能障害になりにくいことを明らかにしました。
つまり、白内障手術は視力を改善させるだけでなく、QOLにとって重要な認知機能低下を生じにくくする可能性を示唆している、と言え、白内障手術は患者さん本人のQOLに関係するだけでなく、増大し続ける医療費を防ぐ一つの手段として有用であるかもしれない、としています。
【研究成果の詳細】
藤原京スタディ参加者2764名(平均年齢76.3歳)を対象として、白内障手術既往群668名と非手術群2096名の2群間の認知機能(Mini-Mental State Examination)を評価しました。視力を含む交絡因子を調整した多変量ロジスティック回帰分析で白内障手術群は非手術群と比較して軽度認知機能障害(mild cognitive impairment)が有意に少なかったが、認知症とは有意な関連を認められませんでした。視力と独立して白内障出術が軽度認知機能障害と関連することが明らかになりました。