matsuda's blog

医療経済実態調査結果報告に対する見解 中医協で診療側が

1124日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で、第21回医療経済実態調査結果報告に関する見解が支払側委員、診療側委員から示されました。診療側の見解は次の通りです。

<第21回医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解>(二号委員:診療側)

平成29118日に報告された第21回医療経済実態調査によると、病院の損益差額率は、一般病院で平成27年度の▲3.7%から平成28年度は▲4.2%と赤字がさらに拡大し、精神科病院では平成27年度の0.2%から平成28年度は▲1.1%となり赤字に転落した。一般病院、精神科病院の損益差額率は直近2事業年度回答方式を採用した第18回調査以降で最低であった。

一般病院(法人・その他)では、1施設当たり給与費総額の伸び率が2.1%増加し、給与費率が55.1%から56.0%に上昇して損益差額率が低下した。しかし、一般病院の主な職種別1人当たり平均給与費の伸び率は、おおむねほぼ横ばいかマイナスであり、給与費の増加は医療の質確保、患者ニーズの多様化への対応のため、さまざまな職種の従事者が増加したことに起因している。医療は地域の雇用を支え地域経済に貢献しているが、多職種の配置に対する評価が十分ではない。

一般病院(医療法人)では、損益差額率は1.8%であるのに対し、税引後利益率は1.4%に縮小する。また、減価償却費率が低いことから、設備投資が抑制されていることがうかがえる。地域医療を守るための再生産が行えない状況にある。

一般病棟入院基本料71101は、民間・公的病院(国公立を除く)でも、損益差額が前回調査、今回調査とも連続して赤字であり、病院経営は危機的状況にある。

また、民間・公的病院の中小病院は医業収益が減少した。特に小規模な病院の医業収益の減少が大きく、損益差額が赤字に転落した。地域で身近な小規模病院の存続が危ぶまれる。

療養病棟入院基本料を算定する病院でも、損益差額率が低下した。特に療養病棟入院基本料2は、前回改定において、医療区分2または3の患者割合が5割以上のみを満たさない病棟、看護職員の配置基準(251)のみを満たさない病棟、または両方の要件を満たさない病棟は5%減算になり、赤字幅が拡大した。

一般診療所では、個人・入院収益ありを除いて、損益差額率は低下またはほぼ横ばいであった。個人・入院収益ありでは医業収益が伸びたが、その内訳を見るとほぼその他の収益の伸びによるものであり、保険診療収益の伸び率はマイナスであった。

一般床診療所(医療法人)も病院と同様、給付費率が上昇して利益を圧迫している。しかし、院長給与の伸び率は過去3回の調査連続マイナスである。また、病院では1施設当たり従事者数が増加しているが、診療所のうち無床診療所ではっきりとした従事者数の増加傾向は見られない。ただし、准看護師などよりも給与水準の高い看護師が増加している。一般診療所の診療報酬はこうした雇用の変化に対応できていない。

在宅療養支援診療所は、一般診療所全体に比べて、給与費率が高く、労働集約的であることがうかがえるが、損益差額率が低い。在宅医療の適切な推進を後押しするためのさらなる支援が不可欠である。

歯科医療機関の8割を占める個人立歯科診療所における直近2事業年の結果では、医業・介護収益の伸びはわずか0.4%で、医療・介護費用は0.3%の減少であった。医業・介護費用の内訳として、「医薬品費」「歯科材料費」「委託費」「減価償却費」が減少していた。医療技術や医療機器の進歩や安全対策、感染対策のニーズに伴い、小規模な歯科医療機関に求められる設備投資や研修の対応等の負担も増えてきている現状がある。このような状況の中で、個人立歯科診療所における経営状況は、これまで繰り返し指摘している通り、既に経営努力や経費削減努力が明らかに限界に達している。安全安心を前提とした歯科医療提供体制の根幹を揺るがしかねない状況であり、加えて求められている歯科医療、口腔健康管理の充実を図るために、速やかで大胆な対応が求められる。

保険薬局の損益状況については、個人立では給与費の圧縮により若干プラスとなったものの(+0.4ポイント)、全開設主体の9割以上を占める法人立では保険調剤に係る収益が減少し、かつ給与費の上昇により損益が圧迫されたことでマイナスであった(▲0.6ポイント)。

医薬品の投与日数の長期化傾向や高額薬剤の上市の影響がある中、薬剤師によるジェネリック医薬品の普及促進に向けた積極的な取り組みの効果や薬価改定に伴う影響(引き下げ)により、薬局の医薬品等費に係る費用は一定程度抑制されている傾向がうかがえる。しかし、ジェネリック医薬品を含む備蓄品目数の増加やその管理コストにあたる給与費等が上昇し、費用の7~8割を医薬品等費が占める薬局にとって、損益状況に大きな影響を与えている。

同一法人における店舗数別でみると、「20店舗以上」の薬局の損益状況は12%以上となり全体平均を大きく上回ったが、いずれの店舗数の薬局も前年比マイナスとなり損益を圧迫している。特に地域包括ケアシステムの中で「かかりつけ薬剤師」機能の中心的な役割を担う、地域に根差した「1店舗」および「2~5店舗」の薬局の損益状況は4%前後と非常に小さく、その経営基盤は極めて脆弱であることが容易に見て取れる。

以上見てきたように、今回の医療経済実態調査結果からは、過去2回の改定で薬価改定財源を診療報酬本体の改定財源に充当せずネットでマイナス改定になったこと、自然増が過度に抑制されていることなどにより、医療機関等は総じて経営悪化となったことが示された。

 

2017/11/30(木) 10:09