女性医師の勤務環境の現況で報告書 日本医師会が公表
日本医師会は、9月20日、「女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書」を公表しました。
調査は、日本医師会の男女共同参画委員会と女性医師支援センターが実施したもので、女性医師の働き方、子育てとの両立等に関する現状を把握するため、病院に勤務する女性医師を対象として、2017年2月20日~3月31日、全国の病院を通じて調査票を配布し、郵送回収で調査を実施しました。有効回答者数は10,373人(病院勤務女性医師の25%)でした。
<結果の概要>
【回答者の属性】
● 勤務形態は、常勤が75%、時短常勤が3.2%、研修医が8.8%、非常勤13%であった。
● 所属病院の規模をみると、20歳代では8割、30歳では7割、40歳代で半数以上が400床以上の大規模機関に勤務しており、年齢階級が上がるにつれて小規模機関に分散していた。
【働き方の現状】
● 1週間の実勤務時間は、時短・非常勤を含めても40時間以内は3分の1にとどまり、概ね月超過勤務80-100時間が12%、概ね月超過勤務100時間以上が13%を占めた。
● 宿日直またはオンコール有は6割以上であった。年齢階級別にみると、29歳以下は9割以上が宿日直またはオンコール有、30歳代以降は割合は下がるが、50歳代でも5割を超えていた。
● 診療科の構成割合は「内科」が最も多く、次いで、「小児科」、「産婦人科」がそれぞれ約1割であったが、診療科は全域にわたっている。1週間の実勤務時間、宿日直、オンコールは診療科によって差異があった。
【子育てとの両立の現状】
● 小学生までの子どもがいる人を「子育て中」として、子育て中の人は3,896人38%を占め、8割以上が常勤または時短常勤であった。子育て中、夫と同居していない人が492人13%であった。
● 「普段子供の面倒をみている人」は、「本人のみ」か「本人と保育所等」との回答が最も多く、夫も普段面倒を見ていると答えたのは乳幼児子育て中の半数以下であった。夫の育児参加状況を「まったく協力しない」は子供が大きいほど、つまり以前の子育てほど割合が大きかった。
● 子どもの発熱など緊急時に自分が休暇を取って対応した割合は、現在乳幼児子育て中の常勤者では47%、経験者では32%であった。預け先として最も多かったのは「親・親族」で、「夫」の2-3倍に上っている。
● 病院からの緊急呼び出しは、「呼び出しなし」と「断るまたは他の医師に依頼する」を合わせ、現在乳幼児子育て中の常勤者では47%、時短常勤者、非常勤者では66%、経験者では28%であった。緊急呼び出し時の子どもの預け先は、夫が最も多かった。
● 仕事を続ける上で必要と思う制度や支援策としては、勤務環境の改善を回答者の96%が挙げ、次いで、子育て支援88%、復職支援を38%が挙げた。家庭・育児に関する悩みを71%が、医師としての悩みを64%が、職場における女性医師としての悩みを36%が挙げた。
日本医師会では、「職場の男女共同参画や育児支援への意識は高まっている一方、家庭内ではまだ女性医師だけへの負荷が大きいようにみえた。出産、育児を応援するのみならず、医師業務との両立、キャリア形成確保のための支援も重要である。本調査で明らかになった実態から、各地で様々に実施されている育児・介護支援、医療勤務環境改善、職場復帰支援等の事業を評価すること等によって、効果の高い支援策が展開されていくことを期待する」としています。
なお、今回の調査は、病院勤務医のみを対象としたため、基礎医学系・医療行政・診療所医師や産業医など、全女性医師の34%を占める病院勤務でない医師の状況は把握できていないため、今後、多様な働き方をしている女性医師の状況も把握するなどにより、幅広い選択肢を持つ支援策の展開が望まれる、としています。