matsuda's blog

受動喫煙防止対策の徹底で談話 厚生労働大臣

厚生労働省は、620日、「受動喫煙防止対策の徹底」に関する大臣談話を公表しました。

 

受動喫煙の防止については、これまで我が国は、平成15年以降14年もの間、健康増進法に基づき、施設の管理者に受動喫煙防止の「努力義務」を設け、自主的な取組みを推進してきました。しかしながら、たばこを吸わない人が8割を超えているにもかかわらず、未だに多くの国民が飲食店や職場等の「公衆の集まる場」において深刻な受動喫煙の被害に遭っています。

国民全体の健康に責任を負っている厚生労働省としては、「全ての国民の命を守り、子どもたちの未来を守る」ため、「原則屋内禁煙の実現」を最優先課題の一つと位置づけ、第193回国会(常会)での法案提出に向け、検討を進めてまいりました。

これまでの議論を通じ、「望まない受動喫煙をなくす」という法案の目的をはじめ、多くの点では関係者の意見の一致をみることができました。その一方で、受動喫煙被害の最大の現場となっている飲食店の取扱いについては、前提となる客観的データに関する周知不足やこれらエビデンスに基づく議論が十分できず、国民の多くが成立を望んでいた法案の中身につき、残念ながら結論に至っていません。

厚生労働省としては、この度の法案協議過程の議論及び報道等を通じて、受動喫煙対策の必要性及び重要性につき国民的な理解が深まったことは、公衆衛生の観点からは大きな進展と捉えています。

今後、できるだけ早期の法案提出に向けて、以下に掲げるような受動喫煙対策の必要性を巡る科学的データや海外での実例等につき、飲食店団体その他の法案関係者への一層の周知に努め、理解を深めていく考えです。

●国立がん研究センターの発表によれば、受動喫煙を受けなければ亡くならずに済んだ方は、国内で少なくとも年間15千人とされています。

●厚生労働科学研究班の推計によれば、受動喫煙による超過医療費は年3,000億円以上とされています。

●国民健康・栄養調査によれば、非喫煙者が受動喫煙被害に遭遇する機会として一番多いのは飲食店です。

●世界保健機関(WHO)によれば、間仕切りやエリア分けなどによる多くの「分煙」措置は、受動喫煙被害の防止効果が乏しいことが、様々な研究で明らかとされています。

●世界保健機関(WHO)と米国国立がん研究所が共同でまとめた報告書によれば、受動喫煙防止政策によりバーやレストランなどサービス業部門に負の影響は与えないことが示されています。また、愛知県や大阪府の調査でも、自主的に全面禁煙した店舗のほとんどで経営に影響がなかったことが示されています。

●屋内での対策以前に、国内では「野外(路上)での喫煙が規制されている」との意見もありますが、全国1,741の市町村のうち、路上喫煙を何らかの形で規制する条例があるのは243(全体の14%)に留まり、条例の具体的な内容を見ると、私有地を含めた屋外でまったく喫煙できないという自治体はありません。

2010年のWHOIOCによる「たばこのないオリンピック」の合意以降、全ての開催国(英国、ロシア、ブラジル、韓国)では、国レベルで、飲食店を含む「公衆の集まる場」で罰則付きの法制度が導入されています。

なお、一定規模以下の飲食店については「原則屋内禁煙」の例外措置として、「喫煙店」であることの表示義務や、「未成年者を立ち入り禁止とする」という義務を課すことにより、喫煙専用室がなくても喫煙可能とするべきという意見があります。

厚生労働省としては、こうした例外措置の導入を全面的に否定するものではありません。しかし、かかる施策の受動喫煙防止効果はあくまでも限定的なものであることから、広範な例外措置を恒久的に認めることは受動喫煙被害を助長・容認する結果となりかねません。したがって、例外措置を認めるとしても、あくまで小規模飲食店を対象とし、かつ、時限を明確にした激変緩和措置としての位置づけとすべきであるとの立場です。

受動喫煙に伴う深刻な健康被害の実態は、世界的にも科学的に証明されています。したがって、感染症対策など他の社会的規制同様に、あくまで科学的・客観的な視座に基づいた議論を基軸に対策の在り方も検討されなければなりません。喫煙者の方々も、飲食店営業者の方々も、「望まない受動喫煙をなくす」という法案の趣旨自体に反対される方は多くありません。厚生労働省としては、これら受動喫煙対策に関わる関係者の皆様の不安や心配に真摯に向き合い、安心してご協力いただける環境を整えていく努力を続けてまいります。

2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会は我が国で開催されます。過去の開催国が大事に紡いできた「たばこのないオリンピック・パラリンピック」という伝統を継承する責任があります。海外から訪れる多くの観光客を気持ちよく「おもてなし」する責任があります。厚生労働省としては、国民の健康を第一に、世界に恥じない受動喫煙対策の法案を出来るだけ早期に提出すべく、引き続き全力で取り組んでまいります。

 

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000168103.html

2017/06/22(木) 10:31