薬価制度抜本改革について緊急声明 日本ジェネリック製薬協会
日本ジェネリック製薬協会は、11月29日、「薬価制度の抜本改革についての緊急声明」を発表しました。
平成28年11月25日に開催された経済財政諮問会議において、薬価制度の抜本改革等について有識者議員提出資料に基づき議論されました。しかしながら、本内容が現実となった場合、「後発医薬品の使用促進や安定供給を阻害しかねず、医療の効率化にもつながりません。その結果、日本の公的医療保険制度の安定的な維持にも悪影響を及ぼすと考えます。」として、協会が特に懸念している事項を下記の通り示しています。
記
●毎年改定について
・各医療機関等への納入価格について、施設ごと、製品ごとに価格を交渉し、双方が納得する価格で妥結するには相当程度の期間を要しているのが実態であり、特に後発医薬品においてはその性格上、品目数も多く、なおさらであります。
・早期妥結のインセンティヴを導入することは、適正な価格形成を阻害する可能性もあります。
・仮に毎年改定した場合には、改定後半年で薬価調査となり、適正な市場実勢価格の把握が困難であると考えられることから、実施すべきでないと考えます。これまで通り2年に1回の改定で、適正な市場実勢価格を把握して行うべきと考えます。
●初収載の後発医薬品の薬価の引き下げ
・初収載の掛け率は、平成24年の薬価制度改革から、26年度、28年度と3回連続で引き下げられてきた経緯があり、既に十分低い水準にあります。
・28年度の薬価制度改革後、現行制度が適用されたのは本年6月収載の一度のみであり、その市場実勢価格も十分に形成されていない段階で、さらなる引き下げを行う合理的な理由は見当たりません。
・度重なる引き下げにより、新たに収載する予定の品目の開発を見送るケースも出てくるようになり、後発医薬品が1品目も収載されなくなるものが出てくる恐れが指摘されています。それでは、医療費の効率化につながりません。
・日本の後発医薬品の諸外国との価格の比較については、国によって保険制度も異なることから、そもそも単純な比較は不可能ですが、平成27年9月30日の中医協薬価専門部会で具体的なデータを示した通り、日本の価格は諸外国と比較して決して高くなく、どちらが高いとは一概に言えません。
・したがって、国際的にみて高すぎるから3~4割程度引き下げるべきという主張に対しては断固反対します。
●既収載の後発医薬品の1価格帯について
・26年度の薬価制度改革で、価格帯の集約ルールが導入されましたが、価格帯の集約は、市場実勢価格と改定薬価の乖離が大きくなるため、事業者にとっては極めて不公正なルールであります。3価格帯を1価格帯に変更することは、その不公正さを更に拡大することになります。
・その結果、後発医薬品の安定供給を通して貢献しようとしている事業者の経営の安定性を損うことになり、1価格帯には断固反対であります。
●特許切れ先発品の保険償還額を後発品の薬価に基づき設定することについて
・国民皆保険制度の持続可能性を確保する観点から、保険償還額を長期収載品と後発医薬品で同額にすることについては理解しますが、本制度を導入することにより、患者、医療機関等に、長期収載品から後発医薬品へのこれまでにない急激な需要の変化をもたらし、後発医薬品の安定供給に悪影響を及ぼすことを強く懸念します。
・国の目標である後発医薬品の数量シェア80%に到達した後であれば、このような制度を導入しても混乱は小さいと思われますが、現在、後発医薬品の数量シェア(新指標)は各調査において60%を超えたところであり、80%到達までにはなお一定程度の期間を要すると考えられます。
・したがって、現時点における本制度の検討、導入については明らかに時期尚早であり、これに反対するものであります。