平成28年度診療報酬改定について意見提出 中央社会保険医療協議会
中央社会保険医療協議会は、9月11日の第319回総会において平成28年度診療報酬改定について意見を提出しました。
中央社会保険医療協議会は、医療経済実態調査の結果、薬価調査及び材料価格調査の結果等を踏まえつつ、平成28年度診療報酬改定について審議を行ってきましたが、その結果を整理し、厚生労働大臣に意見を提出したものです。
<平成28年度診療報酬改定について>
○ 我が国の医療については、2025年(平成37年)に向けて、制度の持続可能性を確保し、国民皆保険を堅持しながら、高齢化の進展に伴うニーズの変化に対応して、国民がその状態に応じた安全で安心な質の高い医療を受けられるよう、医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築等に取り組むことが重要な課題である。
○ 社会保障審議会医療保険部会及び医療部会において取りまとめられた「平成28年度診療報酬改定の基本方針」(基本方針)でも、重点的に取り組む課題として、医療機能の分化・強化、連携を含め、在宅医療や訪問看護の整備を進め、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築することが示された。
○ 本協議会は、この基本方針に基づき、全ての国民が質の高い医療を受け続けるために必要な取組についての協議を真摯に進めていく。こうした基本認識については、支払側委員と診療側委員の意見の一致をみた。
○ しかし、このような基本認識の下で、どのように平成28年度診療報酬改定に臨むべきかについては、次のような意見の相違が見られた。
まず、支払側は、政府の掲げる強い経済の実現は未だ道半ばであり、医療保険者の財政は深刻な状況に陥っている一方で、医療経済実態調査の結果では、医療機関等の経営は全体としておおむね堅調に推移していること、足下で賃金・物価に改善傾向が見られるとしても、長年に亘り賃金・物価の伸びを上回る診療報酬改定が行われてきていることを考慮すれば、患者負担や保険料負担の増加につながる診療報酬の引上げを行うことは、到底、国民の理解と納得が得られないことから、28年度改定において、診療報酬はマイナス改定とすべきとの意見があった。また、26年度改定と同様、薬価・特定保険医療材料価格の引下げ分を診療報酬本体に充当せず、国民に還元すべきとの意見であった。
○ 一方、診療側は、医療経済実態調査の結果等から、医療機関等は総じて経営悪化となったこと、超高齢社会に対応し、地域包括ケアシステムの確立を含め、国民の安心・安全の基盤を整備するためには、過不足ない財源投入が必要であること、医療には経済波及効果、雇用創出効果もあり、アベノミクスの成果による賃金上昇を医療従事者にももたらす必要があることから、必要な財源を確保し、診療報酬本体はプラス改定とすべきとの意見であった。
また、薬剤と診察等とは不可分一体で、その財源を切り分けることは適当でなく、薬価等の引下げ分は本体改定財源に充当すべきとの意見であった。
○ 本協議会は、社会保険医療協議会法でその組織構成や、審議・答申事項等を法定されており、医療保険制度を構成する当事者である支払側委員と診療側委員、そして公益委員が、医療の実態や医療保険財政等の状況を十分考慮しつつ、診療報酬改定の責任を果たしてきた。
診療報酬改定は、基本方針に沿って、診療報酬本体、薬価及び特定保険医療材料価格の改定を一体的に実施することにより、国民・患者が望む安心・安全で質の高い医療を受けられるよう、医療費の適切な配分を行うものである。そのために、本協議会においては、これまでも医療制度全体を見渡す幅広い観点から、膨大な時間を費やしデータに基づいた真摯な議論を積み重ね、診療報酬改定に取り組んできており、これからもそのように取り組み続けていく。
○ 厚生労働大臣におかれては、これまでの本協議会の議論を踏まえ、平成28年度予算編成に当たって、診療報酬改定に係る改定率の設定に関し適切な対応を求めるものである。
○ また、我が国の医療が抱える様々な課題を解決するためには、診療報酬のみならず、都道府県に設置された地域医療介護総合確保基金の活用や予防・健康づくりの取組など、幅広い医療施策を講じていく必要があり、この点についても十分な配慮が行われるよう望むものである。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000106235.html