飲酒及び喫煙年齢の引き下げに対する見解公表 日本医師会
日本医師会は、9月9日、「飲酒及び喫煙年齢の引き下げに対する見解」を公表しました。発表された見解は次の通りです。
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9月2日に開催された自由民主党政務調査会「成年年齢に関する特命委員会」において、選挙権の満18歳以上への引き下げに伴い、飲酒および喫煙年齢もこれに合わせることが妥当である旨が記載された提言案が示されました。
飲酒については、飲酒開始年齢が低いほどアルコール依存症になる確率が高くなり、アルコール依存は薬物依存につながるリスクがあります。
また、記憶力への影響は年齢が低いほど大きくなり、極端な学習成績の低下にもつながると言われています。
さらに、いわゆる「一気飲み」等による急性アルコール中毒で医療機関に搬送されるのは20歳代が最も多く、10歳代についても未成年飲酒禁止法により飲酒が認められていないにも関わらず、相当数に上っています。
加えて、飲酒による暴力などの社会的問題を派生させるおそれもあります。
このような状況を受けて、アルコール健康障害対策基本法が平成26年6月に施行され、現在、政府は同法に基づくアルコール健康障害対策推進基本計画の策定に向け、アルコール健康障害対策関係会議において検討を重ねています。
これらのことを考えますと、今回の提言案は、政府が目指す総合的かつ計画的なアルコール健康障害対策の推進という流れに逆行するものと言わざるを得ません。
一方、喫煙は、がんに限らず、脳卒中、心筋梗塞、COPD(慢性閉塞性肺疾患)等さまざまな疾病のリスクを増大させるなど、非感染性疾患による成人死亡の主たる要因であることは広く知られています。
特に、肺がんの罹患率は喫煙年数に影響を受け、喫煙可能年齢の引き下げは喫煙年数の増加につながり、将来の肺がんの罹患率の増大を招くおそれがあります。
また、未成年の喫煙習慣は脳の発育にも影響を与え、オランダの研究によれば、発達途上にある前頭葉皮質の認知機能シナプスの構造変化が危惧され、注意欠陥や認知症の早期発症の可能性が指摘されています。
わが国は世界保健機関(WHO)たばこ規制枠組条約に批准し、同条約締結国となっています。
本条約は、たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から、現在及び将来の世代を保護することを目的としており、条約締結国として、わが国にはこの目的の達成に取り組むことが求められているのです。
以上のことからも、喫煙可能年齢の引き下げを示す特命委員会の今回の提言案は、同条約の趣旨を軽視した暴挙と言わざるを得ません。
そもそも政府は、日本再興戦略に基づき、国民の健康寿命の延伸を目指しているはずです。青年期の飲酒や喫煙の生活習慣は、その後の個々の健康にも大きく影響を及ぼすものであり、飲酒及び喫煙年齢の引き下げは、国民の健康の維持・増進という視点からも断じて容認できるのではなく、全国の多くの医療関係者からも強い懸念の声が上がっています。
このような状況に鑑みますと、日本医師会としては今回の特命委員会の提言案に示す飲酒および喫煙年齢の引き下げは認めることは到底できず、断固反対するとともに、その撤回を強く求めていく所存です。