診療報酬改定で発表 日本医師会横倉会長
日本医師会の横倉義武会長は、12月20日、「平成26年度診療報酬改定財源決定」にあたって次の通り発表しました。
平成26年度の診療報酬改定は、厳しい国家財政の中、診療報数全体で0.1%増となりました。
社会保障の充実に向けて、ご尽力頂きました安倍内閣総理大臣をはじめ、麻生副総理兼財務大臣、菅内閣官房長官、田村厚生労働大臣、その他関係議員の先生方に、深く感謝申し上げます。
今回の診療報酬改定は、国民との約束である社会保障・税一体改革に基づき、社会保障の充実に充てられることになっておりましたが、いまだ充分とはいえません。改革には充実と強化のために原資が必要であり、今、必要なのは、「ビジョンと実行」です。
まず、診療報酬本体につきましては、消費税率引上げと同じタイミングで、保険料・患者負担という国民負担が増えることがないよう、調整がなされました。地域医療を再興させ、切れ目のない医療を提供するための手当て等として、診療報酬本体で0.1%の財源を確保されたとのことです。
このため、社会保障・税一体改革への対応としては、前述の理由により、診療報酬での底上げではなく、医療法等の改正により創設される基金に約600億円上積みし、全体で約900億円の基金で対応することになりました。上積みされた基金では、地域包括ケアの中心を担うかかりつけ医機能を持つ医療機関を中心に配分されるとのことです。
なお、消費税8%への引上げ対応分につきましては、従来用いられてきた「消費者物価への影響」ではなく、「消費税率」が用いられ、医療機関等に負担が生じないように引上げ対応分への補填が行われたとのことです。消費税引上げ対応分は、初再診料を中心に補填されることが見込まれています。
わが国は高齢化先進国として、世界に先駆け高齢化に対応した医療提供体制を構築するための改革を進めなければなりません。高齢化がピークに達する2025年までの11年という短い期間に、社会保障制度を持続可能なものにするよう、必要な改革に取り組んでいく必要があります。厳しい改定財源において、高齢化に向けて医療に係る懸案の改革を進めていく必要があります。
日本医師会は、今回の診療報酬改定において、「国民との約束である社会保障・税一体改革への対応」、「地域医療を再興させ、切れ目のない医療を提供するための手当等」、さらに、「消費税8%への増税分の補填」の3点を要望してまいりました。
今後、具体的な配分の議論に移りますが、今回の診療報酬改定では、地域包括ケアで提供される高度急性期から在宅まで切れ目のない医療を推進するため、在宅医療の充実や、医療・介護の連携等、地域包括ケアシステムの中心を担うかかりつけ医への評価がきちんと行われなくてはなりません。
また、7対1看護基準の適正化に伴う急性期後の受け皿づくりの整備のため、回復期病床、有床診療所の評価が必要です。
一方で、的確な投薬管理・指導の推進や、大規模調剤薬局の調剤報酬の適正化を行っていかなくてはなりません。
本年6月に策定した日本医師会綱領においても、「日本医師会は、国民とともに、安全・安心な医療提供体制を築きます」と明記し、誠実に実行することを約束しました。先般、病院団体とともに今後の医療提供体制のあり方について共同提言を行いましたが、これは、医療界一致の提言であり、社会保障制度改革国民会議以来の政府の方向性とも一致するものです。
これからの国民の医療はどうあるべきかとの視点から、医療の改革を進めることが重要であり、日本医師会は不退転の決意で改革を進めてまいります。
私は、あるべき医療の姿に向けた喫緊の課題として、次の4点が必要であると考えております。
それは、第一に住み慣れた地域で最後まで安心して暮らせるための「超高齢社会における地域包括ケア」、第二に医療機関の自主選択を尊重した「医療の機能分化・機能連携の推進」、第三に「地域医療支援センターの機能強化による医師確保と偏在を是正するための保険医・保険医療機関の適正な指定」、第四にわが国の成長戦略を支え、世界最高水準の日本の医療機器を諸外国に提供するという「医療の国際貢献」です。
我々医師を始めとする医療提供者は、国民が活力を持って働き、安心して過ごせるよう、国民の生命と健康をこれまで以上にしっかりと守っていかなければなりません。国民が安心して働くことができる環境を整えることは、わが国の経済を成長軌道に戻すための礎です。
結びに、政府におかれましても、医療をはじめとする社会保障に対して十分な支援と環境整備を引き続き行っていただくようお願いいたします。日本医師会は、地域医療の再興に向け、国民誰もが必要な医療を過不足なく受けられるよう、あるべき医療の姿の実現のため、勇往邁進してまいります。