かかりつけ医のためのBPSDに対する向精神薬使用ガイドライン 厚労省が公表
厚生労働省は、7月12日、「かかりつけ医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」について発表しました。
「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」では、その計画の一つとして「認知症の薬物治療に関するガイドライン」の策定を予定していたところですが、今般、平成24年度厚生労働科学研究費補助金厚生労働科学特別研究事業において行われた「認知症、特にBPSDへの適切な薬物使用に関するガイドライン作成に関する研究」の成果として、当該ガイドラインが策定されたため公表しました。
ガイドラインは、「BPSDに対する薬物療法の進め方」、「ガイドライン作成の背景と目的」、「BPSDの治療に使われている主な向精神薬と使い方の留意点」で構成され、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入薬に分けて解説されています。
作成の背景と目的は次の通りです。
○ かかりつけ医は、高齢者の身体疾患への日常的な対応や健康管理などを通じて、状態の変化をいち早く捉えることが可能である。さらに、認知症を取り巻く家族の状況を含めた環境についても把握しやすい立場である。BPSDが多要因によって発現あるいは修飾されることを考えれば、かかりつけ医が認知症疾患医療センターなどの専門的な医療機関と連携することにより早期の対応が可能となり、BPSDの悪化防止に寄与することができる。
○ 認知症者のQOLは多要因によって規定され、BPSDあるいはその治療のための向精神薬によっても影響を受ける。
○ 24年度に行われたかかりつけ医による認知症者に対する向精神薬の使用実態調査結果では、かかりつけ医(2960人に調査票が発送され、604人から有効票回収。回収率19.5%)の94.5%に認知症患者が通院し、89.2%が向精神薬を服用していたが、常に同意を得ているかかりつけ医は19.1%という低い率にとどまっていた。
○ 同調査の22種類のBPSDについて向精神薬を処方することがあるかどうかの設問では多弁、過食、異食、徘徊、介護への抵抗など向精神薬の有効性に関する報告がないBPSDに対しても向精神薬が処方されている実態が示された。
○ 認知症の治療ガイドラインはすでに日本神経学会によってまとめられたものがあるが、ここではそのエビデンスを踏まえて実践的なガイドライン作成を意図した。
○ 向精神薬の使用に際して、身体拘束を意図した投薬は避けるべきであり、いかなる場合でも認知症になっても本人の意思が尊重される医療サービスが提供されるように努めるべきである。なお、治療によりBPSDが改善しない場合には認知症疾患医療センターなどの専門的な医療機関へ紹介などの連携をとることが望ましい(診療情報提供料Ⅰの認知症専門医療機関連携加算、認知症専門診断管理料2など、BPSDが悪化した場合のかかりつけ医と認知症疾患医療センターの連携について診療報酬上も評価がなされている)
※BPSD:Behavioral and Psychological symptoms of Dementia(認知症の行動・心理症状)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036k0c.html