バルサルタン論文不正問題疑惑で見解 日本医師会
日本医師会は、5月29日の記者会見で、「バルサルタン論文不正問題疑惑」で見解を発表しました。
内容は次の通りです。
今般、京都府立医科大学をはじめとする多くの大学において行われた医師主導の臨床研究の論文において、製薬企業ノバルティスファーマ株式会社の社員が、身分を伏せて自社の高血圧治療薬「バルサルタン(商品名ディオバン)」の臨床研究の統計解析に関与していたことが判明し、データが捏造されたのではないかとの疑惑が、一般紙等により報道されている。
日本医師会は、国民医療、国民皆保険制度を守る立場から、本件に対する見解を以下のように公表する。
臨床研究には、高い倫理性と公正性が求められている。臨床現場の医師は、研究成果を踏まえて医薬品を使用しており、これに疑念が生じていることは、患者の健康にも多大な影響を与えかねないことが懸念される由々しき問題である。
また本件は、利益相反にとどまらず、国民の医薬品ひいては医療への信頼を失墜しかねない重要な問題であると認識している。また、疑惑のある薬に対して、国民は実際に服用し、保険料や窓口負担等で賄われている医療費から多額の支出(平成24年度売上:約1100億円)もなされていることを極めて重く受け止めなければならない。
さらに、日本の医学・医療に対して、海外からも疑惑を持たれていることは、高いレベルの医学研究、医療を行っており、今後、成長戦略として位置づける日本発の医薬品の国際的な信用にとっても大きなマイナスであり、誠に遺憾である。
ノバルティスファーマ株式会社は、日本医学会等への報告をしたとのことであるが、本件の事実関係について、広く医師、患者、国民に対して早急に説明責任を果たすべきである。
医療の提供は非営利、透明性が徹底されるべきであり、患者の生命・健康、国民の医療に対する信頼を守るためには、医薬品・医療機器産業においても、他の業種に比して高度な倫理性が要求される。本件は、その研究成果が販売促進に利用されていたとのことであるが、製薬企業等が不正、あるいは公正性を欠くような関与をすることは断固として認められない。ノバルティスファーマ株式会社は、襟を正した対応が求められる。
さらに、厚生労働省においては、田村厚生労働大臣が発言したように、国民の医療を守り、医薬品の研究開発や国民皆保険を所管する立場から、関係企業等に対する指導・監督を適切に行うべきである。
日本医師会は、臨床研究が国民ら不信感を抱かれることのないよう関係各大学及び各学会に対し、自浄作用の下に第三者の参画も得て対応することを求めるとともに、臨床研究に携わる医師に対しては、高い倫理性の下で、厚生労働省が示している「臨床研究に関する倫理指針」の更なる遵守を求めるなどの対応をしていきたい。
また、本件について、会員医師に対する正しい情報の提供に努めていきたい。