matsuda's blog

日本医師会が野田第3次改造内閣発足で見解

日本医師会は、103日の定例記者会見で、「野田第3次改造内閣発足を受けて」のコメントを発表しました。

内容は次の通りです。

 

101日に野田第3次改造内閣が発足いたしました。今回の厚生労働大臣、副大臣、政務官には5名中3名が医療専門職の経験のある方が就任されました。三井大臣、櫻井副大臣、梅村政務官におかれましては、医療現場の経験を生かされ、厚生労働行政をリードして行かれることを望みます。

さて、発足以来50年を経過した我が国の国民皆保険制度は、世界に冠たる制度であります。我が国の公的医療保険制度の基本理念として、①すべての国民が同じ医療を受けられる制度、②すべての国民が支払能力に応じて公平な負担をする制度、③将来にわたって持続可能性のある制度、の3点が必要です。

公的医療保険制度をさらに充実させるためには、地域医療の再興が必要であります。地域医療は、それぞれの地域で必要とされる医療を適切に提供していく仕組みが重要であり、都道府県や市町村等地域の実態に基づいたものとすべきです。

具体的には、ボトムアップ型としての地域医療提供体制の再構築に向けて、地域の医療・介護から福祉まで全体を見据えたニーズを見極め、急性期だけではなく、予防、亜急性期、回復期、慢性期、在宅医療まで、「切れ目のない医療・介護体制」という視点が必要です。地域の実情が充分に反映され、家族のあり方に考慮した多様な提供体制、地域の自由度の高い制度の設計をすべきであります。

特に高齢者人口は、首都圏をはじめとする都市部を中心に増加することが見込まれており、あわせて疾病構造も変わり、疾病予防や介護予防が重要になると考えられます。地域によって医療資源は異なっており、地域において予測された医療ニーズをもとに、かかりつけ医機能を中心としたそれぞれの地域の医療提供体制を構築する必要があります。

一方、社会保障・税一体改革関連法は本年810日に成立しましたが、国が現在進めている社会保障・税一体改革につきましては、消費税率の引き上げにより社会保障の安定的財源が確保されたこと、消費税収を年金、医療、介護、少子化のために充当することが明確化されたことを評価いたします。

また、控除対象外消費税の解消につきましては、法律に明記されているように、税制に関する決定権限を持つ検討の場を早急に設置すること、社会保険診療報酬等に対する消費税の非課税制度を仕入税額控除が可能な制度に改め、かつ患者負担を増やさない制度に改善することを求めたいと思います。

なお、社会保障制度改革推進法には、公的医療保険制度について、「原則として全ての国民が加入する仕組みを維持する」とされており、例外をつくる可能性が示唆されています。国民皆保険は、経済力によって受けられる医療に格差が生じることなく、すべての国民が加入することが大前提であり、かつ、①公的な医療給付範囲を将来にわたって維持すること、②混合診療を全面解禁しないこと、③株式会社を医療機関経営に参入させないこと、が重要であります。給付範囲の縮小や、国民が受けられる医療の格差拡大につながらないよう、しっかりと注視していきたいと思います。

なお、特例公債法案につきましては、政府が今年度一般会計予算の執行を抑制している現状であり、国民の生命、健康、さらには生活が脅かされることのないよう、決められる政治により早期に成立することを望みます。

今後、社会保障に関する具体的な検討は社会保障制度改革国民会議で進められます。社会保障は、国民の生命と安全を守るためにあります。政府は、国民の生命と健康を守る専門家集団である日本医師会を社会保障制度改革国民会議に参画させ、意見を真摯に取り入れるべきです。

どのような政治状況になろうとも、日本医師会は国民の生命と健康を守る医療現場の意見を述べていきます。

 

 

http://www.med.or.jp/

 

2012/10/04(木) 15:49