matsuda's blog

「こころの健康基本法案骨子」で意見表明 日本医師会

日本医師会は、627日の定例記者会見で、「こころの健康基本法案(仮称)骨子」に対する意見を表明しました。

内容は次の通りです。

 

わが国では1988年以降、年間自殺者数が3万人を超える状況が続いている。さらに自殺未遂者は少なく見積もっても既遂者の10倍は存在すると推定され、医学的には自殺者の大多数が最後の行動に及ぶ前に何らかの精神疾患に該当する状態にあることが指摘されている。

また、昨年311日に発生した東日本大震災の強い恐怖体験により、子どもたちを含め多くの被災者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいると言われており、その支援は長期的かつ重点的に行われることが求められている。

すなわち、精神保健・精神医療の充実は社会的な課題であり、国としてその対応を進めることが必要であることは言を俟たない。

 

一方、現実的にはすでに精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)、障害者基本法等の既存の法律が施行・運用されている。

こころの健康基本法案(仮称)骨子(以下、法案骨子)においては、国、都道府県に対して、「こころの健康環境基本計画」の策定を義務付け、市町村には努力義務を課している。そして、原則として当該施策の具体的な目標、達成時期を定めるとしている。

しかし、医療法に基づく医療計画の4疾病5事業に新たに「精神疾患」が加わり5疾病となり、来年度の実施に向け、いままさに各都道府県において医療連携を中心とした医療提供体制に係る計画策定が進められているところである。

また、法案骨子では、地方公共団体に「地域こころの環境センター」設置の努力義務を課しているが、すでに各都道府県、政令市では、精神保健福祉法の規定に基づく精神保健福祉センターが稼動しており、屋上屋を重ねる施策になりかねない。

 

このように、法案骨子に示される内容は既存法、あるいは既存法の充実によって対応可能であり、新たな法制化によって、かえって現場の混乱を招くことが懸念される。

いま行うべき理念法の制定よりも、財政的な裏づけに基づく具体的な体制の整備であり、そのことが実効ある精神保健・医療施策の推進につながるものと考える。

 

http://www.med.or.jp/

2012/07/02(月) 14:26