日本製薬工業協会が費用対効果の性急な導入に反対
日本製薬工業協会は、4月18日、中央社会保険医療協議会で提示された「医療技術等の評価における費用対効果の導入の検討」について、問題点を指摘し反対するコメントを発表しました。日本製薬工業協会は、研究開発志向型の製薬企業が加盟する団体で、現在69社が加盟しています。
コメントは次の通りで、詳細は協会のホームページのニュースリリースから検索すれば見ることができます。
中央社会保険医療協議会においては、医療技術(薬剤、材料を含む)評価における費用対効果の導入の検討をするための場を新たに設けることとしている。
日本製薬工業協会としては、医薬品の価値、特にイノベーションを適切に評価することは大変重要であるが、費用対効果の導入については、以下のような問題点があると考える。
すでに諸外国で先行的に導入されている費用対効果を勘案した医療技術評価を見ると、その実態は①患者さんの医薬品へのアクセスを阻害する結果となる保険償還の制限、②薬剤費抑制に主眼をおいた価格設定、に用いられている。その結果、患者さんが必要とする医薬品がタイムリーに臨床現場に届かず、例えば英国では患者団体による抗議デモにまで発展している。
加えて、わが国においては、費用対効果分析の際に必須の疫学的データ(疾病毎の罹患率、死亡率等)や当該疾病の治療に必要な医療費のデータベースすら完備されておらず、客観的・科学的な評価に使用できる環境にはない。また、費用対効果分析・評価にあたっては、治療デザインの変更、新たな試験データの集積、適切な評価モデルの構築が必要とある。さらには結果分析とその評価は関係する当事者間で十分なコンセンサスを得る必要がある。
拙速な導入を図れば、欧州に見られるように患者さんが必要とする医薬品を適確に医療の場に届けることができないという結果を生み、革新的新薬の臨床現場における貢献を著しく阻害することとなる。
日本製薬工業協会としては、これらの課題が存在し、かつ、費用対効果を勘案した医療技術等の評価そのものの共通認識が当事者により醸成されないまま、性急に導入することには反対である。上記の課題から明らかなように、本評価の導入は、わが国の医療の根幹にも係る問題であり、議論の場においては、患者さんはもとより、医療提供者、支払い側等全ての当事者による、共通認識の形成、問題意識の共有化を踏まえ、導入の是非も含めた幅広い検討が必要であると考える。
我々は医薬品を提供するという、まさに当事者として、この議論に積極的に参加し、より良い医療の実現に貢献していく所存である