薬剤師のための災害対策マニュアル 厚生労働科学研究報告書まとまる
平成23年度厚生労働科学研究「薬局及び薬剤師に関する災害対策マニュアルの策定に関する研究」研究班(研究代表者:富岡佳久東北大学大学院薬学研究科教授)において、「薬剤師のための災害対策マニュアル」がまとめられ、日本薬剤師会が4月2日に公表しました。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、広範囲に及ぶ強い揺れと、特に東日本太平洋岸においては津波により幹線道路が寸断し、広範囲な交通遮断と通信網の崩壊による孤立が起こりました。また、その他の地域においても、震災直後からライフラインの供給停止をはじめとするインフラストラクチャーが崩壊し、医療の提供が困難になりました。そのような中で、全国から薬剤師が被災地に赴き、献身的に医療支援等の活動を行い、約4ヵ月にわたり被災薬剤師や関係者の努力が続けられました。
本研究では、被災地で活動した薬剤師からの報告をもとに、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、地方自治体等の協力を得て、東日本大震災における被災者への薬剤師による医療支援体制、被災地域における薬局機能の確保等について、当時の状況を調査・検証し、大規模災害時における薬剤師の役割について検討しました。
さらに、日本薬剤師会が阪神・淡路大震災及び新潟県中越大地震等の検討を踏まえて平成19年1月に作成した「薬局・薬剤師の災害対策マニュアル」や、平成16年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業「新潟県中越地震を踏まえた保健医療における対応・体制に関する調査研究」において作成された「自然災害発生時における医療支援活動マニュアル」を参考に、東日本大震災で明らかになった問題点や成功例等を検証し、より実践的な「薬剤師のための災害対策マニュアル」を作成しました。
本マニュアルは、医療に従事する薬剤師及び薬剤師会が災害時に行うべき活動と、平時の準備・防災対策をまとめたもので、今後起こり得る同様の大災害に備え、薬剤師や関連する諸機関がどのような役割を果たし、各機関が効率的かつ効果的に"連携"を図りながら体制を構築し、医療活動を行っていくための指針を示しています。第1章では医療機関の薬剤部門について、第2章では薬局について、第3章~第5章では薬剤師会について、第6章では災害時の薬剤師の救援活動について記載しています。
「災害時に果たす薬剤師の役割は、災害の規模、発生の時期(季節)、場所、時間帯等により様々であり、また情報通信の技術進歩等の周辺状況の変化を考慮すれば、将来のどのような場合においても、ある一つのマニュアルどおりに対策を講じることは適当ではなく、個別の事情に応じた創意工夫・臨機応変な対応が必要である。従って、本マニュアルを活用し、個別の事情を鑑みた活動計画の作成や更新を進めていただきたい。またどのような場合でも、求められる薬剤師職能が最大限発揮できるよう平時から準備・研鑽しておくことが大切である。いざという時には、まず自身の安全を確保し、そして薬剤師会や行政等との組織的活動に当たって欲しい」としています。