東日本大震災における活動報告書を公表 日本薬剤師会
日本薬剤師会は、3月9日、東日本大震災1周年を前に、東日本大震災における日本薬剤師会の活動報告書を取りまとめ、公表しました。被災3県を除く44都道府県薬剤師会より、実人数2,062人、延べ8,378人の薬剤師が被災地に出動し、支援活動を行ったことなどが報告されています。児玉孝会長は要旨次の通り述べています。
日本薬剤師会では、東日本大震災が発生した平成23年3月11日当日、直ちに災害対策本部を立ち上げ、その後、都道府県薬剤師会との連携のもと、被災地における医薬品の安全・安心な供給と使用を確保するため、特に被害の大きかった岩手・宮城・福島の3県を中心に、約4ヵ月にわたり継続的に薬剤師の派遣を行いました。
今回の震災は、①被害が広域に及んだこと、②津波被害・原発被害により、避難者・避難所の数が膨大であったこと、③被災地の薬局・医療機関等も壊滅的な被害に遭い、被災地の薬剤師(会)のみでの支援活動は不可能であったことなどから、全国からの支援が必要な状況にありました。その一方で、①被災地域の地理的な特性、②広域にわたる道路・線路等の交通網の寸断、③ガソリン・水・食料品の不足などの悪条件が重なり、個人が自己責任において被災地に入り、支援活動を行うには大きな困難が伴うことも容易に想像できました。
そこで、日本薬剤師会では、全国の薬剤師が支援活動に参加しやすくなるよう、全国11ブロックを3つに分け、岩手・宮城・福島の3県別に支援する担当ブロックを定め、組織的に派遣・支援を行うスキーム(仕組み)を構築しました。その結果、震災発生後の4ヵ月で、被災3県を除く44都道府県薬剤師会より、実人数2,062人、延べ8,378人の薬剤師が被災地に出動し、支援活動を行いました。
各被災地で、薬剤師は薬剤師法第1条に明記されている「調剤」「医薬品の供給」「薬事衛生」というすべてを包括した活動を行いました。薬剤師の活動が被災地の皆様への医療支援のみならず、健康支援や生活環境の改善にまで寄与できました。
過去の阪神・淡路大震災や新潟県中越大震災においても、薬剤師による支援活動が行われましたが、これら過去の支援活動と比べ、①日本医師会や都道府県をはじめとする関係行政・団体と連携して活動を行ったこと、②薬剤師が医療チームの一員として、他の医療職と連携して災害医療に貢献できたこと、③過去の支援活動がボランティア活動であったのに対し、今回の薬剤師派遣は被災県からの要請に基づくものであったこと、④「お薬手帳」が医薬品の安全な使用に効果を挙げたこと、⑤多くの職域の薬剤師が参加したことなどは、意義が大きいと言えます。これらの薬剤師の活動は結果として、医療チームの医師等をはじめ、被災地の関係者やマスコミ等から高い評価をいただきました。
また、日本薬剤師会では、被災会員への義捐金の募集を行うとともに、地域薬局等の復興・復旧に向けた要望活動を関係各方面へ展開しました。皆様からお預かりした2億4,500万円余の義援金(諸外国薬剤師会からの222万円余を含む)は、本会からの見舞金と合わせ、被災県薬剤師会を通じて被災会員へお贈りいたしました。
今回ではこの程、このような東日本大震災における日本薬剤師会の活動記録を報告書として取りまとめました。今回の経験が、一つの糧として今後の薬剤師の災害活動に繋がれば幸いです。