薬局におけるふるさと実習に向けた提言を作成 日本薬剤師会
日本薬剤師会は、12月14日、都道府県薬剤師会会長宛に「薬局におけるふるさと実習に向けた提言」の作成について通知しました。
日本薬剤師会では、実務実習受入体制を構築する中で、ふるさと実習の実現に向けた準備も進めてきましたが、6年制における実務実習が2年目に入った本年度においても、地区を超えてふるさと実習が行われるケースは少なく、一部地域に実習生が集中する反面、実習生が殆んど割り振られない県も存在しています。
そのため、実習生の偏在解消、全国的受入資源の有効活用といった観点から、薬局におけるふるさと実習の拡充について、主に薬学教育に関する特別委員会内の実習受入体制整備検討会で対応を検討してきましたが、今般、検討会では、対応の一環として、ふるさと実習の推進に関する提言を作成しました。
日本薬剤師会では、この提言を薬学教育関係諸団体との会合等に提出し、関係者にふるさと実習の推進について一層の協力を求めていくこととしています。
提言は、ふるさと実習のメリット・デメリット、現状の課題、今後の対応策などをまとめ、「6年制における実習も2年目に入った現在、実習の更なる充実のために、ふるさと実習の推進に向けて、8地区はもとより、諸団体が連携していくべきである」としています。
<ふるさと実習を行うメリット>
○ 生まれ育った地域の医療及び医療提供体制を学べる
○ 出身地の地域医療に貢献している薬局の業務を体験することで、学生の地域医療への関心を高めることができる
○ 自宅から通学することにより、肉体的、精神的、金銭的負担を軽減することができる
○ 実習生が過密な地域の解消につながる
○ 実習生を受入れることにより、受入施設・支部(特に大学のない県)を活性化することができる
○ 大学と受入施設、支部が連携することにより、薬剤師の生涯学習の幅を広げることにつながる
<ふるさと実習を行うデメリット>
薬剤師側からはデメリットは考えられない。平成22年度にふるさと実習が低調であったのは、ふるさと実習にデメリットが存在したからではなく、実施体制で、まだ十分整備されていない面があったからと推測される。
<ふるさと実習を行う上での現状の課題>
○ 地区内での実習を原則としている
○ 地区内の実習生と他地区からの実習生の調整が、同時に行われていない
○ 物理的に他地区からの受入が難しい地域がある
○ 教員が遠距離への訪問指導を負担に思っている
<ふるさと実習を実施する上での今後の対応策>
○ 地区を越えたふるさと実習が可能となるよう、実習地を原則地区内とする現行のルールを変更する
○ 全ての学生の実習先の調整を同時に行う
・ ふるさと実習希望者が不利にならないようなシステムとする
・ 実習施設(及び都道府県薬剤師会)が混乱しないよう対策を講じる
・ 中央調整機構の機能強化
・ 各地区調整機構の連携・協力
・ 大学周辺施設の開放(大学周辺の施設は、その大学の学生の実習先になるべきであるという意識のもと、実際にそうなっている部分を解消する)
・ 薬学部のない県には受入の優遇策を認める
○ 訪問指導の見通し
・ インターネットの活用等により、訪問回数等に関係なく、質の担保が可能な、教員による指導システム
・ 大学から遠隔地で実習を実施する際に、実習施設近隣の大学の教員や地区の薬剤師会の役員等が、当該大学教員の代わりに訪問指導を実施するシステム
○ Iターンの活用
Iターンは、現状の過密地域の解消、及び過疎地域の実習推進につながる。
現状でも、長野県で宿泊施設を安価で提供し、Iターン実習を受け入れている実例があり、鳥取県でも同様の受入の検討を視野に入れている