matsuda's blog

24年度診療報酬改定で意見 中医協で支払側と診療側が

中央社会保険医療協議会の第208回総会は、1125日に開催され、平成24年度診療報酬改定に関する基本的な見解として、1号側(支払側)委員と2号側 (診療側) 委員がそれぞれ基本的な考え方や意見を表明しました。

内容は次の通りです。

 

1号側委員(7)

       わが国の経済・社会情勢は、低成長が長期化する中で、急激な円高の進行により景気や雇用情勢が悪化し、賃金・物価も依然として低下傾向が続いている。さらに、今後は、高齢化に伴う社会保障負担の増大や東日本大震災の復興増税により、国民生活は一層厳しさを増すことが見込まれる。

       こうした中で医療保険財政は、保険料収入を上回る医療費の伸びや高齢者医療制度に対する支援金・納付金の増加により急速に悪化しており、安定的な運営をはかることが極めて重要な課題となっている。一方、第18回医療経済実態調査によると、医療機関の経営状況は急性期病院の収支が改善しているほか、慢性期病院や診療所、薬局も黒字が続いているなど、概ね安定的に推移している。

       以上の状況を踏まえると、平成24年度に患者負担や保険料負担の増加につながる診療報酬全体の引き上げを行うことは、とうてい国民の理解と納得が得られない。

       今回の改定では、医療機能の分化と強化、介護報酬との同時改定を踏まえた医療・介護の連携、高齢化に対応した在宅医療の充実などへの対応が求められている。また、前回改定で実施した救急・産科・小児や在宅医療、病院勤務医対策等、必要度の高い分野に対しては、引き続き重点的な評価を行うことにより、財源を効率的かつ効果的に配分すべきである。

       一方、一般病床における長期入院の是正、療養病床から在宅医療への移行等による平均在院日数の縮減などの取組みのほか、後発医薬品のさらなる使用促進等の適正化対策を講じるべきである。

       なお、東日本大震災における被災地へのインフラ整備策は、主に政府予算上の措置として実施し、診療報酬はこれを補完する算定要件の緩和措置等で対応することとし、救急などの不採算となる医療に対しては、引き続き補助金による支援を継続すべきである。

       さらに、改定に当たっては、診療報酬改定結果検証部会や調査専門組織の報告書、医療経済実態等の結果を考慮するとともに、患者の視点、納得性の観点から、診療報酬体系の簡素・合理化、医療の透明化、ICTの利活用も推進すべきである。個別項目に対応する考え方については、今後の審議の進捗状況も踏まえ、改めて意見を提示することとしたい。

 

2号側委員(7)(要旨)

我が国では、国民皆保険の下、低水準の医療費の中で世界一の医療レベルを達成してきた。しかし、長年にわたる医療費抑制政策、とりわけ今世紀に入ってから4度にわたる診療報酬の引き下げにより、医療提供に必要なコストは抑えられ続け、国民が求める医療の質の高さとの矛盾は一方的に現場に押し付けられてきた。そして、心ある医療従事者の疲弊や医療機関の縮小・倒産等を招き、いわゆる「医療崩壊」と呼ばれる事態が引き起こされた。前回改定では実に10年振りのプラス改定となったが、その改定率はわずか+0.19%にとどまり、過去のマイナス改定分を回復するものではなかった。実際、先般の第18回医療経済実態調査の結果においても、急性期医療を引き受ける大規模病院では、ある程度の収支の改善が見られたものの、依然として赤字が続いており、地域医療を支える中小病院や一般診療所も損益分岐点比率は90%を超える危険水準にあり、歯科診療所、保険薬局も含め、経営がなお不安定であることが示されている。つまり、これまでやっとの思いで生き残ってきた医療機関が、国民のための質の高い医療の提供にとって不可欠な設備投資を行い、更に勤務医等の負担軽減・処遇改善を進めるためには、前回のプラス改定のみでは不十分ということである。こうした厳しい状況において、今回の診療報酬改定は、財政中立の下での財源の付け替えで済ませられるようなものではない。

民主党は、診療報酬を増額し、医療崩壊を食い止めると政権公約に掲げて政権を獲得した。また、本年630日にまとめられた「社会保障・税一体改革成案」には幾つかの問題点が含まれているものの、医療を含む社会保障の「機能強化」を実施するとし、相当の資源を投入する方向性を打ち出している。そのためには診療報酬の引き上げが不可欠であると考えるが、問題は、国家財政も保険者財政も厳しいと言われている中で、それに必要な財源を如何にして確保するかという点である。相応のコストの負担なくして、国民に対する良質な医療の提供は不可能である。しかし、我が国の場合、国際的に見て患者負担は重いが、税と保険料の負担割合は低く、低所得者に配慮しながらも、税と保険料の負担を引き上げる余地はある。医療の機能維持・強化につながる負担増には国民からの理解も得られるであろう。さらに、医療費を単なる負担としてだけで捉えるべきではない。医療は人々の健康回復・保持・増進をもたらし、それが社会的にも経済的にも多くの価値の創出につながっている。しかも将来にわたって安定した雇用を地域に生み出すことで、デフレ経済下にあっても、医療は地域経済を下支えしている。診療報酬改定に当たっては、医療のこうした側面も総合的に評価する必要がある。

もちろん我々も専門家集団としての自律性を発揮し、自己改革に取り組んでいなければならないが、医療機関の経営は依然として、医療従事者の過重労働をはじめとする現場の代償の上に辛うじて成り立っているというのが現実である。こうした状況にあって、医療従事者のみならず国民が広く抱いている将来不安を払拭するためには、根拠に基づいた適切な技術評価を反映した診療報酬改訂を行い、医療再生を図ることが不可欠である。国民の生命および健康を守るために、平成24年度診療報酬改定に当たっては、診療報酬の引き上げによる医療費全体の底上げを強く求めるものである。                                         

 

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vpkq.html

2011/11/28(月) 12:53