特定看護師問題は慎重に議論すべき 日本医師会
日本医師会は、11月16日の記者会見で、特定看護師(仮称)問題について、「慎重に議論すべきである」との考えを明らかにしました。
日本医師会は、特定看護師(仮称)制度の問題点として、1.国民や患者が望む制度なのか、2.侵襲性の高い医行為及び難しい判断を伴う医行為は医師が行うべきである、3.「ミニ医師」ではなく、看護師にしかできない業務を究めるべきである、4.看護師が安全に実施可能な診療の補助行為の整理、5.看護職以外の医療関係職との関係、6.具体的指示と包括的指示、7.法制化による影響等について具体的に示し、次の通り見解をまとめています。
チーム医療の推進は、国民がより安全で質の高い医療を受けられるよう、全ての医療関係職種が質の向上に取り組み、連携・協働して行くことであると認識している。
しかし、現在議論となっている特定看護師(仮称)問題は、「チーム医療の推進」とは名ばかりで、医師不足を補うために看護師に医師の代わりをさせたいという一部の医師と、「看護の自律、キャリアアップ」のために特定看護師(仮称)が必要であると主張する一部の看護師に端を発するものである。
現在、医療現場では、医療安全を高めるために、医療機関全体で様々な取り組みを行っているところである。チーム医療をさらに進めることは重要であるが、業務範囲の拡大によって、医療安全が損なわれることがあっては本末転倒である。そのことを十分肝に銘じて、慎重に議論すべきである。
◇ 現在、「特定看護師(仮称)養成調査試行事業」(平成22年度開始)及び「特定看護師(仮称)業務試行事業」(平成23年度開始)が行われている。これらの事業は、「特定行為」とは何かを大学院等がそれぞれ考え、自ら決めた内容を教育し、国として何ら担保することなく、現場で実践することを認めるというものである。2年間教育を受けた者はまだ存在しておらず、進行中の事業である。従って、まず、この試行事業の結果についてきちんと検証を行い、その結果を踏まえて、必要かどうかをじっくり議論していくのが筋である。
◇ 11月7日の看護業務検討ワーキンググループに「看護師特定能力認証制度骨子案」が示されたが、厚生労働省は充分な議論を経ないままに、保健師助産師看護師法の改正に向けて、12月の社会保障審議会医療部会に諮ろうとしている。関係者や国民の合意なきままに、社会保障・税一体改革ありきで法制化を急ぐことは許されない。特定看護師(仮称9の創設は、国民の生命にかかる重大な問題であり、社会保障・税一体改革とは一線を画し、時間をかけて慎重に検討することを求める。