TPP交渉参加で表明 日本医師会・歯科医師会・薬剤師会
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、11月2日、合同記者会見を開催し、「TPP交渉参加にむけての見解」を発表。「日本は、世界に誇れる国民皆保険を堅持してきた。政府が、今後も国民皆保険を守ることをはっきり表明し、国民の医療の安全と安心を約束しない限り、TPP交渉への参加を認めることはできない。」と表明しました。
<TPP交渉参加にむけての懸念内容>
政府は、「公的医療保険制度はTPPの議論の対象になっていない模様」としているが、あくまでも現時点での推測であり、楽観的過ぎる。われわれは、以下の情勢分析から、公的医療保険制度がTPPに取り込まれるおそれがあるのではないかと危惧している。
1.2010年6月に、政府は「新成長戦略」を閣議決定し、医療・介護・健康関連産業を日本の成長牽引産業として明確に位置づけた。これ以降、医療の営利産業化にむけた動きが急展開している。
2.TPPのイニシアティブをとる米国は、かねてより日本の医療に市場原理を導入することを求めてきた。過去には、2004年の日米投資イニシアティブ報告書(2004年6月)によって、混合診療の全面解禁や医療への株式会社の参入を求めた。最近では、2011年2月の日米経済調和対話で、米国製薬メーカーの日本市場拡大のため、薬価算定ルール等に干渉した。また、2011年3月の外国貿易障壁報告書では、医薬品・医療機器分野における要求に加え、医療サービス分野においては、営利目的の病院の参入を求めている。こうした経緯から、米国がTPPにおいて従来の要求を貫くことは当然予想される。
3.米韓FTAでは、医薬品、医療機器の償還価格にまで踏み込んだ内容になっている。一方で、公衆衛生など公共の福祉のための規制は間接収用の対象外とされているが、TPPは、FTAの枠組みをはるかに超える高いレベルの経済連携を目指している。TPPの下で、混合診療が全面解禁されれば、公的医療保険の存在が自由価格の医療市場の拡大を阻害しているとして、提訴されるおそれを払拭できない。
4.以上の懸念に対して、政府からは、現時点では問題ないという推論か、安心・安全な医療が損なわれないように対応するという総論的、抽象的回答しかない。また昨日11月1日の衆議院本会議で、野田総理自身が「交渉参加に向けた協議を進める場合、交渉参加国からの個別の二国間懸案事項への対応を求められる可能性は完全には否定できない」と述べている。
<政府に対する要請>
1.政府は、TPPにおいて、将来にわたって日本の公的医療保険制度を除外することを明言すること。
2.政府は、TPP交渉参加いかんにかかわらず、医療の安全・安心を守るための政策、たとえば、混合診療の全面解禁を行わないこと、医療に株式会社を参入させないことなどを個別、具体的に国民に約束すること。