埼玉県で発生した調剤事故死亡事例で見解 日本薬剤師会
日本薬剤師会は、埼玉県越谷市で開設する薬局の開設者が業務上過失傷害の疑いで、また薬局の管理薬剤師が業務上過失致死の疑いで書類送検されたことについて、8月22日、見解を表明しました。内容は次の通りです。
埼玉県で発生した調剤事故による死亡事例について
平成23年8月19日、埼玉県警札本部は記者会見を行い、埼玉県越谷市で開設する薬局の開設者を業務上過失傷害の疑いで、管理薬剤師を業務上過失致死の疑いで書類送検したことを公表しました。
誤調剤の詳細については明らかになってはおりませんが、新聞報道によると、死亡した患者は10年前から脳梗塞の後遺症を持つ75歳(当時)の女性患者で、当該薬局で調剤を受けた際、本来ならば胃酸中和剤が投薬されるべきところを誤ってコリンエステラーゼ阻害剤が投薬され、それを服用した結果、昨年4月7日に薬物中毒により死亡したとのことです。
調剤過誤の事実が判明した直接のきっかけは、当該患者が亡くなる直前、体調不良を訴えて医療機関を受診した際に、投薬された医薬品が間違っていることに気付いたことによりますが、当該薬局では4月1日に調剤過誤に気付きながらも、管理薬剤師は患者への服薬中止の指示や、調剤薬の回収をするなどの安全対策を講じず、放置していたことが判明しています。また、当該薬局の開設者は埼玉県薬剤師会の前会長で、本年1月までは本会の理事も務めていた、指導的な立場にある薬剤師であります。
医師の処方に基づき薬剤師が調剤を行う医薬分業制度は、より安全・安心な薬物治療を提供する上で不可欠な仕組みとして、欧米はもとより我が国でも広く普及しているシステムです。しかしながら、薬剤師が誤りを認識しながら、適切な対応を取らなくては、患者の安全確保は望むべくもありません。これは、医薬分業の理念の根幹を揺るがす問題であります。
処方せん調剤にあたっては、万が一にも調剤過誤を起こさぬよう、細心の注意を払い、薬剤師が相互に点検・確認をしながら正確に業務を進めることが求められており、日本薬剤師会では医薬品に関わる過誤・事故を防ぐため、マニュアル等を作成し、広く会員への注意喚起を繰り返し行ってきました。しかしながら、今回の事例は国民・患者からの医薬分業や薬剤師に対する信頼を大きく損なう行為であるとともに、会員への周知策がなお十分でない証左として、極めて遺憾であり重大に受け止めています。
本会では、亡くなられた患者さんに対しまして心よりご冥福をお祈りしますと同時に、今回発生した事例を真摯に受け止め、二度とこうした事態を惹起せぬよう、調剤過誤防止に向けた会員への指導並びに周知を一層強化する所存です。