スイッチOTC候補成分で医学会等からの意見を公表 厚生労働省
厚生労働省は、8月15日、「医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としても利用可能と考えられる候補成分」について、医学会等からの意見を公表しました。
これは、平成23年3月に、日本薬学会から提出された「医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品としての利用も可能と考えられる候補成分検討調査報告書」について、4月27日付で、日本医学会及びその分科会(110団体)に対して送付し、意見を伺いましたが、今般、医学会等から提出された意見を8月10日時点で公表するものです。今後、報告書と医学会などからの意見を持って、薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会において議論することとなります。
薬学会が選定した成分(過去3年の検討結果で保留となり、今回再提案された成分を含む)は、コレスチミド(コレステロール低下薬)、アカルボース(糖吸収抑制薬)、オメプラゾール(胃酸分泌抑制薬)、メペンゾラート臭化物(下部消化管痛改善薬)、ポリカルボフィルカルシウム(便通異常改善薬)、プロピベリン塩酸塩(排尿改善薬)、セルニチンポーレンエキス(排尿改善薬)、ピランテルパモ酸塩(ぎょう虫駆除薬)、ヒアルロン酸ナトリウム(涙液補助用点眼薬)、メナテトレノン(骨粗鬆症用薬)の10成分で、これに対して日本消化器病学会など12学会から回答(意見なしも含む)が寄せられました。
意見の表明があった中で、賛成の意見についての主な内容は次の通りで、詳細は厚生労働省ホームページで確認できます。
<日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会>
オメプラゾール(PPI)(経口)のOTC化は時期尚早。
メペンゾラート臭化物(トランコロン)(経口)とポリカルボフィルカルシウム(コロネル、ポリフル)(経口)に関しては、OTCとしても大きな支障はないという結論です。少数意見として、正確な診断のもとに処方される薬剤であるために、やはりOTCは好ましくないという意見もありましたが、科学的にOTCとすべきでないという根拠はないというのが意見です。
<日本感染症学会>
ピランテルパモ酸塩(コンバントリン)のスイッチ化に賛成する。本薬は発売以来広く使用されており、その安全性と有効性は確立していると思われる。スイッチ化により利用者の利便性は増加するであろう。販売に際し薬剤師の関与を義務付けることで、安全性は担保されると考えられる。
<日本整形外科学会>
メナテトレノンについて反対はしないが賛成もできない。
<日本糖尿病学会>
アカルボースの一般用医薬品転用については全く賛成しかねる。
今回の一般用医薬品転用候補から是非除外していただきますようお願い致します。
<日本眼科学会>
ヒアルロン酸ナトリウムのスイッチ化の可能性について、候補成分とすることに大きな問題はないとの見解に至りました。
なお、今回の報告書において、日本薬学会が示されている(1)1週間程度使用しても改善が認められない場合は、眼科医を受診することを(販売時に)薬剤師が(必ず)勧奨する、(2)(剤型として、)防腐剤を含まない一回使用型であるミニタイプを用いる、の2点の対策が望ましいことを申し添えます。前者は眼科治療の対象となるドライアイ患者の抽出に、後者は長期使用に伴う薬剤性障害の回避に不可欠であるからです。
他方、(2)に示すような剤型を用いますと、現在、医家向けに上市され、重症ドライアイ(シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群)にのみ保険適用のあるヒアレイン・ミニと同一製剤となります。眼科医の診断のもと重症例に処方されている点眼薬と同じ製剤がOTC点眼薬として販売される点については、臨床家として当惑を禁じ得ません。OTC化に先立ち、ヒアレイン・ミニの保険適用疾患の再検討、すなわち眼球乾燥症候群(ドライアイ)への適応拡大が優先されるべきかと考えます。
<日本寄生虫学会>
コンバントリン錠を一般用医薬品とすることについて、十分注意を払うことを条件に提案の方向性については諾とすることもやむを得ないかと思いますが、何点か本学会として意見を付したいと思います。(以下略)
<日本循環器学会>
コレスチミド(医療用販売名コレバインミニ83%)のスイッチ化の可能性については、本薬剤の用途として、日本薬学会の「食事などの生活習慣の改善に努めてもなお境界領域の高LDLコレステロール血症が改善できない場合に限定することで問題ない」とされているのはその通りでありますが、スイッチかされた場合において、どのようにして、誰がコレスチミド服用のために「改善できない場合」かどうかの判断をなし、服用継続の妥当性を評価するのかが問題となります。(中略)
本提供文章に書かれているような体制でのコレスチミドのスイッチ化は国民を危険から充分守りきれないと判断し、現時点での移行は困難と判断します。
一方、糖吸収抑制薬ボグリボース、アカルボース(経口)については、昨年学会としての回答を表明していますが、この回答を受けて述べられている今回の日本薬学会からの対策案では、指摘した問題点の解決には不十分であると考えています。本医薬品を一般用医薬品として利用することに関しては依然として重大な懸念があります。購買者の自己申告を前提とした対策案では、リスクが極めて高いと思われます。糖吸収抑制薬を一般用医薬品転用候補から是非除外していただきますようお願い致します。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001lsbn.html