matsuda's blog

日本薬剤師会が見解発表 政府の社会保障改革案に

日本薬剤師会は、63日、62日に政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」から公表された社会保障改革案について見解を発表しました。

 発表された見解の要約は次の通りです。

<要約>

 平成2362日、政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」から、これまでの議論の経過を踏まえて、社会保障改革案が公表されました。

 社会保障・税の一体改革に関し、本会は、本年422日に開催された「社会保障・税一体改革に関する意見交換会」のヒヤリングにおいて、医療・介護における医薬品の適正使用を担う薬剤師の視点からの意見を述べたところです。本会の意見に照らし、昨日公表された改革案については概ね妥当なものと受け止めています。

 しかしながら、受診時定額負担の新設及び医薬品の患者負担の見直しの部分については、具体的な内容は未だ定かではありませんが、必要な受診・必要な投薬の機会を抑制する恐れがあることから、受け入れることはできません。

 また、今回の改革案においては、医療提供体制の効率化・重点化と機能強化が盛り込まれています。本会としては、医薬分業の更なる推進と地域医療体制の中での薬局・薬剤師の活用、医療機関におけるチーム医療の中での薬剤師の活用を一層進めていくことが、医療機能の強化の観点からも重要であると考えます。

 また、後発医薬品の更なる使用促進については、本会としてこれまでも会員への指導を行ってきたところであり、引き続き協力してまいる所存です。

 

見解では、改革案に対しては理解を示しているものの、「個別具体的な事項やそれを進める行程表に記載されている改革の方向性を見てみると、問題と思われる部分がある」として、以下の通り指摘しています。

 

その一つは、社会保障の根幹をなす医療・介護等の分野で提言されている「医薬品の患者負担の見直し(医薬品に対する患者負担を、市販医薬品の価格水準も考慮して考え直す)」というものです。

 この文言からだけでは具体的な内容は定かではありませんが、仮に、医療保険において用いる医療用医薬品について市販の医薬品に類似のものがある場合には、医薬品に係る本人負担に格差を設けるということであれば、断じて賛成できる提案ではありません。

 患者の治療に必要な医療用医薬品について、類似する市販医薬品の価格を参考に医療保険での給付に格差を付けるという考え方は、改革案の基本手方針にも掲げられている「格差の是正」とは全く矛盾する考え方と言わざるを得ません。

 好んで病気になる人はいないにも拘らず、不幸にして罹患した疾病の違いと使う医薬品によって保険給付に差が出来るような仕組みでは、必要な医薬品が使われなくなることが懸念されます。とても社会舗装改革とは言い難い単なる財源上の辻褄合わせであり、強く反対するものです。

 

 また、二つ目は、高度・長期医療への対応(セーフティネット機能の強化)と給付の重点化策として、「高額療養費の見直しによる負担軽減と、その規模に応じた受診時定額負担等」が盛り込まれ、外来(初診・再診時)の一部負担金に100円を上乗せする案が示された点です。

 定率制の自己負担を支払った上に、仮に100円とはいえ付加的な負担を患者に求めることは、わが国が世界に誇る皆保険制度の下で確保されている「フリーアクセス」を阻害し、患者の受診抑制をも惹起し、また、患者の受診機会を損なうことにより結果的に重症化に直結する大きな問題と考えます。今後の国家財政の状況によっては、定額負担のさらなる増額も想定されることから、「混合診療導入へ向けた施策」ではとの懸念もあり、到底容認できるものではありません。

 上記2つの施策については、今後、慎重な検討を強く求めたいと思います。

 

http://www.nichiyaku.or.jp/

 

2011/06/06(月) 11:32