matsuda's blog

注目される携帯電話による服薬情報管理活用モデル事業

大阪府は、平成23年度当初予算(政策的経費)に携帯電話による服薬情報管理活用モデル事業を計画していました。予算総額は189615000円で全額国庫委託金です。今回は、利用を予定している国庫委託金が、国の行政刷新会議「事業仕分け」において、廃止と判定されているため、大阪府においてもゼロ査定となり、予算計上には至らないことから実現は困難となりました。しかし、興味深い内容であり、実現が期待されるものです。

 これは単年度事業ですが、薬局で渡される服薬情報を携帯電話に取り込み、いつでも携帯電話から服薬情報を確認できるシステムを構築することにより、医師・歯科医師・薬剤師が災害時や旅行時であっても常に患者の携帯電話から服用薬を正確に把握することができ、薬の飲み合わせなどの健康被害を未然に防止する等、府民の安心・安全を守ることを目的として取り組もうとするもので、薬局で提供しているお薬情報を携帯電話に散りこむシステムの開発のため、レセプトコンピュータソフト会社にソフトウェアの改修を依頼すると共に、各薬局への説明会の開催等の業務を大阪府薬剤師会に委託して実施するものです。

 携帯電話の普及は目覚しく、内閣府の20103月実施消費動向調査では世帯普及率は92.4%29歳以下では100%30~59歳で98.4%に達しており、60歳以上でも87.8%となっています。電気通信事業者協会の調査では、同時点の契約数は11218万台であり、 201010月末時点には11590万台に達しています。日本の総人口が12800万人弱ですので、まさに11台という状況です。もちろん若い世代は1人で2台も3台も保有しているケースもあることから、一概には言えませんが、携帯電話を活用した事業は大きな可能性を持っています。特に、携帯電話は高齢者の間にも普及していることから、医療面での活用が期待されます。

わが国でも、日本版PHR(Personal Health Record)システムの研究、携帯電話を利用した新薬臨床試験服薬管理システム、服薬履歴情報管理、携帯電話による処方情報と服薬情報を統合した服薬支援システムなど様々な研究が行われています。厚生労働省、総務省、経済産業省の連携による取り組みも進められていますが、実際に予算化となると、複数の省の間で事業を計画しており、予算編成の段階でこれらの整理が求められていることから実現は難しいようです。国及び地方自治体において財政状況が逼迫していることから、実現にはハードルは高いようですが、非常に興味深い事業であるため、地域を限定して実施するなどのトライアルに取り組むことも面白いものと思われます。

 

2011/01/27(木) 00:00