matsuda's blog

甘草(カンゾウ)の人工栽培に新たな展開

 甘草は数多い生薬の中でも最も繁用されるものの一つです。グリチルリチンなど甘味成分が含まれ、主に根部を乾燥させたものを生薬として用いますが、わが国では、全て輸入に依存しています。最近、その甘草の栽培をめぐる新しい動きがありました。

鹿島建設株式会社、独立行政法人医薬基盤研究所、国立大学法人千葉大学は共同で、甘草の水耕栽培に日本で初めて成功し、植物工場で残留農薬の危険のない均質な甘草を短期間、かつ安定的に生産できる栽培システムを開発したことをこのほど発表しました。

この水耕栽培システムにより、植物工場で均質な甘草を短期間に国内生産することができ、薬用植物の国内栽培普及に向けた新たな動きが加速するものと期待されます。生薬甘草の安定的な生産と品質の向上を目指して、実証データを蓄積しており、薬用植物は根部に薬効成分を蓄積していることが多いため、今後、他の業種に対してもこの栽培システムの適用、採算性の検証を進めていく計画です。

また、三菱樹脂株式会社は、先に、株式会社グリーンイノベーションと共同で、薬用植物の甘草(カンゾウ)の人工栽培の研究開発を10月から開始することを発表しました。

薬用植物は、主に漢方薬や食品、健康食品、化粧品などの幅広い分野で利用されています。しかし、一方で、薬用植物の生産国においては、野生品の乱獲が問題となり、薬用植物資源保護の観点から採取制限が実施される動きもあります。そのため、消費国ではこれらの安定確保が大きな課題となってきています。三菱樹脂とグリーンイノベーションは、予備調査の結果を踏まえて、10月から2年間、貴重な薬用植物である甘草の人工栽培の研究に取り組むこととしたものです。

薬用植物の中でも、多くの漢方薬に使われている甘草は、ほとんどが野生品で、しかも大半が海外からの輸入に頼っています。そのことから、日本国内での栽培が急務となってきていますが、気候風土や栽培技術の問題で日本国内での栽培は難しいと言われています。

甘草(カンゾウ)は、多くの種類がありますが、医薬品として使われるのはスペインカンゾウ(G.glabra)とウラルカンゾウ(G.uralensis)の2種類しかなく、日本国内の使用量はおおよそ1100トンで、全て中国からの輸入品です。しかも、生産国である中国では環境保護の観点だけでなく、市民の収入が上がり、経済状況が良くなっているため、消費が増えている上、一部保険が適用されるようになったことから、中国国内の需要が増えています。

一方、千葉のベンチャー企業も栽培方法を確立したと報じられており、佐賀県玄海町では、九州大学と共同で平成20年度から薬草の栽培研究開発事業に取り組み、農業や観光への波及効果も期待していますが、その中心的な薬草が甘草となっています。

甘草は医薬品だけでなく、食品の甘味料としても幅広く利用されており、これらの栽培事業の今後の発展が注目されます。

 

2010/11/25(木) 14:45