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(株)育星会の誕生への道のり 第23章 庄内カイセイ薬局の開設と会社のモットー誕生

23章 庄内カイセイ薬局の開設と会社のモットー誕生

 

平成101月、大阪府豊中市庄内に開設したのが庄内カイセイ薬局です。庄内カイセイ薬局は育星会第1号店であるホシ薬局が処方せんを応需している上田内科医院の上田卓也先生の叔父様である上田正規先生の病院で、この病院の処方せんを応需することを目的として開設しました。当初は外科中心の病院でしたが、地域のニーズに併せて診療科も増えてきました。

この時には薬局を開設する場所を探すのに「灯台下暗し」という経験をしました。そして、この時に「あなたにやさしい薬局、あなたにやさしい薬剤師」というモットーが誕生しました。

上田正規先生は、初めは医薬分業をすることに難色を示しておられました。反対ではありませんが賛成でもありませんでした。甥の上田卓也先生には医薬分業の良さやメリットを盛んに訴えていただきましたが、上田正規先生は乗り気ではありませんでした。川久保と私は何度も足を運びましたが、当初は相撲の話ばかりで、そのような状態が長年続きました。上田正規先生は、いわゆる相撲の「タニマチ」で、後援会の会長もされ、毎年、大阪場所では土俵近くの桟敷席に座っておられるのがテレビでよく映っておられました。それが、何度も足を運ぶうちに、ようやく「考えてみよう」ということになり、「どうすればよいのか分からないので話を聞かせてほしい」と相談を受けるようになりました。

そこで、薬局を開設する場所探しが始まりました。しかし、庄内は下町で、なかなか薬局を開設する場所が見つかりません。病院の隣接地に大きな駐車場があり、その一部を借りるという考え方もありましたが、持ち主は「全部を借りてくれるなら」と言います。そうしますと、かなりの資金が必要になります。また、病院の向い側に土地があったのですが、そこは既に病院が関連施設のために購入していました。「灯台下暗し」で「とき既に遅し」でした。

ところが、間に入ってくれた人がいて、大きな駐車場の一部、道路に面した部分を育星会が借りて、残りの広い部分を病院が駐車場用地として借りることで解決しました。薬局側としても、患者様が駐車場に行きやすいように配慮しました。

育星会としては「人間性のつながり」を重視して進めていますので、うまくいけば極めてスムーズに進みますが、長くかかる場合もありました。

近隣の医療機関とも話をしましたが、「いずれは処方せんを出すだろう」との感触を得ていましたので、「少しくらい離れても良いだろう」と考え、薬局の開設場所にはあまり拘らず数軒の医療機関の中心になる場所を考えていましたが、それがアダになってなかなか見つかりませんでした。結局は、最初に考えて資金のためにキャンセルした良い場所に開設することができたわけです。しかし、期待した近隣の医療機関の処方せん発行は実現しませんでした。周辺は下町で、患者さんが費用に敏感であるため、医療費が高くなる処方せんは発行しにくいという面があったようです。

また、下町という環境は「あなたにやさしい薬局、あなたにやさしい薬剤師」というモットーの誕生につながります。「下町で親しみのある薬局にする」という考え方から、会社のモットーが誕生し、初めて掲げられました。

最も気になったのは、「下町だから、患者の方も値段の面で厳しいだろう」という点でした。病院の隣ですので、「遠い」という批判はないでしょうし、「面倒くさい」という点はあるにしても、それほど抵抗はないでしょうが、「今までと違って高い」という批判は多いだろうと病院の事務長さんには言われていました。

つまり「調剤薬局は値段が高くなった」という批判を払拭して行くためにはどうしようかと考えました。あちらこちらで始まっていた「物を進呈しようか」とか「値引きしようか」なども考えましたが、それは「将来的にみて良いことではない」と判断しました。それよりも「文句を言う人は仕方がない。それよりも『値打ちがあるな』と受け取ってもらえるようなことを考えよう」と知恵を絞りました。そこで、何か目標を決めよう、言葉として目標を設定しようと考えました。

その時に「あなたにやさしい薬局、あなたにやさしい薬剤師」という言葉が出てきたのですが、それ以外にも「あなたに親切な薬局、あなたに親切な薬剤師」とか、「あなたに喜ばれる薬局、あなたに喜ばれる薬剤師」などいくつかの表現もありました。しかし、どうしても限られてきます。「親切だけでよいのか」などの考え方です。もっと幅広い表現はないかということから「やさしい」という表現が出てきました。

このことで思い出すのは、川久保と議論したことです。「あなたにやさしい薬局、あなたにやさしい薬剤師」というのは大きな目標であり、私は、その下にもっと細かく目標を10項目ぐらい作ってはどうか主張しました。「患者は満足して帰りましたか」など患者の満足度を示せるような10項目をつくって打ち出そうと主張しました。しかし、川久保は大きな目標だけでよい、後は社員たち、次の次代を担う者に任せればよいと主張します。結局、まず大きな目標だけをつくろうということになりました。ただ、この時に、社内に委員会でも設置して、次にやらなければならない10項目について検討しておれば今では相当充実した10訓が出来上がっているだろうなぁ~と思っています。それをしていればもっと充実したものになっていたでしょう。

スタッフの方も、下町という環境を重視して人材を選びましたし、「笑顔とやさしさでカバーしろ」と強調しました。他の店よりも余計にその面を重視しました。薬剤師もベテランが来てくれて、特に兵庫医大の南田先生の奥様がご活躍していただき、スタート後はほとんどトラブルもなくスムーズに進みました。上田正規先生のお人柄もありますが、上田卓也先生の強いご推薦があったからこそという点が幸せだったと思います。

2013/03/10(日) 00:00