yoshio's blog

全体会議講演(平成24年4月22日) のまとめ・最後に

最後に、私は引退して7年ですが、自分自身が患者という立場になって、患者の目線になってみて初めて判ったことを少し紹介したいと思います。

 

私は1年ほど前から糖尿病が悪化して腎不全となり透析を始めました。そのため、1ヶ月に透析機関で5~6枚、他の医院で2枚くらい処方せんをもらっています。その殆んどは娘のやっている八千代薬局で調剤してもらいますが、楽しみは、毎月2枚ほどを持って色々な薬局に調剤してもらうために行く事です。処方せんがありますので、初めての薬局でも堂々と行くことが出来ます。育星会の薬局には必要がないので回りませんが・・・。そうしますと、他の薬局の良い点悪い点がよく判り、患者と進む道のりがよく見えて来たのです。

 

そこでまず感じるのは、殆んどの薬局の薬剤師は「上から目線」です。薬剤師だけでなく、その他の従業員も含めて、すごく上から目線で言っているように感じられます。言っている本人は感じていないのでしょうが、ニコニコと優しい口調で「何々してくださいね」という一見優しい言葉に聞こえますが、「何々をしなさい」と命令口調に言われているような慇懃無礼に感じているのは私だけでしょうか・・・。病人相手ですから「もう少し心をこめて言ってもらえないのかなあ~~」と思いました。個々の資質というよりもお店全体の雰囲気でした。当然店頭で患者さんの悩みを充分に聞いてあげる時間がありません。(今度のコンピュータで変わることを期待します)

また、処方せんを渡しますと、「とにかくお座りください」と言われましたので、「有り難う」と座りますと、薬局のスタッフが横に来まして、「お客さんの薬はこういう薬ですが、これとこれをジェネリックに替えたらこれだけ安くなります。替えてみられますか」、そういう説明を受ける場面がかなりありました。「またか」という感じですね。充分にコミュニケーションが出来ていないのに、「私の為に言ってくれているのかな?」、それとも「これをするとこの薬局が得になるのかな」と思ってしまいました。昔の薬局乱売時代に、生き残る為にお客さんの求めてきた乱売している薬を、定価で販売しているチェーン品に必死で切り替え説明して、ふと気がついたら薬局・薬剤師に対する信用度を破壊してしまった過去の苦い思い出が浮かんできました。

説明するのも、次から次に患者さんが来ますので、時間がありません。『お大事薬剤師』になるのも無理のないことですね。「この薬は何ですか?」と聞こうとしますと、「お薬手帳のシールに書いてあります」と言われて断られたり、ゆっくり説明を聞いていると、後ろから患者さんに「おおい、何してんねん。早せいや」と言われて怒られたり、薬局の同僚が横から早くするようにつついて合図したりしているのを見かけました。

これはどういうことかなと思いますが、やはり薬局の店頭で薬を渡して説明せよということには、あまりにも今の保険財政では時間的に効率が悪くて無理なんでしょうね。しかし、何処かで誰かが説明するか相談に乗ってあげなければ問題は発生し易いでしょうね。薬局の中には別にお薬相談コーナーがあり、窓口で長くなりそうであれば、「そちらの方で」と言われますが、患者さんの殆んどは早く帰りたいので、座る席はありますが殆んど説明している姿は見ておりません。

また、殆んどの調剤薬局には関連商品が数少ないのが実情です。私は目を治療する為に眼科に行って処方せんをもらい、眼帯をしたいと思って、眼科医院ではパッチ式の眼帯を貼っていただいただけでしたので、調剤薬局で眼帯を買おうとしましたら品揃えが殆んどありません。「ハイこれです」、「これ以外はないですか?」、「ありません」ということになります。ところが、帰りにスーパードラッグに寄ってみますと数種類の眼帯を出していただけ希望のものが見つかりました。

 

調剤薬局からスーパードラッグでの調剤へ移行する時代が始まるのかな?

 

もちろん、調剤薬局でも素晴らしい店もありました。先日、ある薬局に処方せんを持って行った時に、初めてだということで、「書いて欲しい」と用紙を渡されたのですが、店長という方が私のところに来られて、「私は責任者の○○です。本日は、私どもの店を選んでいただいて有り難うございます」とお礼を言われました。

 

〔私のお店を選んでいただいて有難う御座います。〕思い返しますと、育星会では高知カイセイ開設時に他店との競争の為に使った言葉だった事を思い出しました。

 

また、帰宅してから、夜に薬局へ念のため電話しました。医療機関が開いている間は薬局にも薬剤師がいるので良いですが、閉まってしまうと問い合わせが出来ません。「いったいこの空白の状態は何という不安な状態なんだろう・・・」という疑問が出て来ました。患者さんは2週間分の薬をもらったら2週間の間薬を飲み続けるわけですよね。薬を飲み続けている間に問題が発生する事が多いと思うのですが、一体それを誰がその患者さんの不安をケアしているのでしょうか?

また、スーパードラッグで眼帯を買った時に感じたのですが、店内が明るくて楽しいですね。最近、大型のスーパードラッグが処方せん受け入れを大々的に打ち出しています。これも流れです。「処方せんは向かい側の指定薬局だけでなく、いろいろな好みの薬局に持っていっても良いんだ」と患者さんが自然に判って来ました。それが今の時代です。ですから、スーパードラッグ等は、「どこの医療機関でも関係なしに処方せん調剤をしますよ」と大々的に書き始めたわけです。処方せんは徐々に減って行くので気が付かず、遅れて行くのはマンツーマンでやってきた薬局です。長い間やっていると惰性になり、時代の変化に気が付かなくなります。

 

患者が薬局を選択する時代になりました。

 

私の現役時代に、我が社の薬剤師の質を向上させようと思って、社内勉強会を始めました。最初は月1回の勉強会に沢山来てくれました。社員を含めて殆んどの薬剤師が来てくれました。講師を呼んで勉強会を始めましたが、3回、4回と回を重ねますと、どんどん欠席者が増え、ひどい時には5~6人しか集まりません。60人、70人集まるはずなのに5~6人では講師に申し訳ありません。

そこで、1回出席するたびに5000円を支給しようとしましたが、何回かすると元の木阿弥になり参加者が減りました。「これじゃアカンわ!!」と思いました。

ですから、薬剤師の質を上げていこうと思えば、薬剤師が患者さんからいろいろ質問され、それに答えて患者さんが喜んだ顔を見た時に、初めてその薬が頭の中に入り知識が身に付いて行きますし、自分の努力が実ります。お医者さんがそうですね。患者さんから教えられ、患者さんを手本として、患者さんを教師として知識を増やし技術を磨いていっています。しかし薬剤師にはそれが殆んどありません。患者さんとの会話がありませんから、「お大事に」で終わりです。あとは『お大事に薬剤師』になって行くだけです。それでは、薬剤師は勉強してもなかなか役に立ちません。

そのため、患者さんのところへ入り込んで行こうと考えました。医事課(現推進課)には患者さんの名前を覚えていただこうとしました。これは、「やさしい薬局」の部門ですが、医事課の人たちは、患者さんが入って来られた時に、「何々さんお元気ですか?」と名前がちゃんと言えるようにしようとしました。しかし、前述のようにこれが頓挫しました。

時代は移り変わって来ています。新しい時代に合った知恵が必要です。

今までの医療、薬業というものは、患者さんに対して、医療機関やメーカーや医療関係者たちと薬剤師が肩を組んで、患者さんを上から目線で見ていました。そのような感じで医療がなされてきましたが、世の中が変わって来た事に気付きたいですね。

保険の点数が変更されたり、その時々の状況が目まぐるしく変わります。保険調剤というものは2年ごとに改定され、日の当たる時もあれば日陰になる時もあります。薬剤師もそれに応じて環境が変化します。薬局・薬剤師の立場から患者さんを見ていては目的が分からなくなり、目先の変動に右往左往させられます。その時の状況に振り回されてしまいます。しかし、患者さんの目線で、患者さんを抱きかかえて自分たちの薬局・薬剤師や医療機関、メーカーを見れば何の迷いもなく前に進み続けられます。患者さんの後ろから、患者さんを抱きかかえて、患者さんと同じ目線で、時には、医療機関や製薬会社とも向かい合わなければなりません。そのためには知識も必要です。

 

いつも患者さんの背中から、「あなたと同じ目線で見ているよ」という対応が、これから唯一伸びて行く薬局・薬剤師でしょう。

 

育星会は、常にその方向に進んでいかなければなりません。そういう薬局にみんなが向かっていくという方向を、ホームページの飯田社長の文章で見ましたので、喜んで本日お話させていただくことになりました次第です。ご清聴有り難う御座いました。

2012/09/07(金) 00:00