yoshio's blog

全体会議講演(平成24年4月22日) のまとめ3・患者さんを抱きかかえた薬療

3.患者さんを抱きかかえた薬療

先ほどお話させていただいたように、今回の改正で100点の「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。

病院薬剤師が入院患者の薬療を個々に細かく管理充実して行こうとする試みです。薬療している患者の安全性と有効性をより拡充して行く為、病院薬剤師がどんどん実施して行こうとしています。まだまだ制約がありますが薬剤師による投薬も認められようとしております。

しかし外来の患者さんが毎日服んでいる薬の薬療は一体誰が指導・管理しているのでしょうか?自宅で薬を服んでいる時に不安や問題が起きることが多いのに、誰も手助けせずに(特に調剤して投薬した薬剤師)、薬を調剤して店頭の短い時間で「ハイ!お大事に!」と『お大事に薬剤師』でいいのでしょうか?「問題が起きれば処方医に連絡して下さい」で済ませていいのでしょうか?

薬療を受けている患者のうち入院患者の薬療の管理・指導はドンドン充実して行くのに、外来患者の薬療は何もせずに放って置いて世間が認めていただけるのでしょうか?

「処方監査して正確に間違わずに調剤する」という過去の調剤観念だけで許していただけるのでしょうか?

冒頭で申し上げた今の医薬分業は

「本当に患者のためになっているのか」

 

一人一人の薬剤師が費用に見合うだけのサービスを患者さんに与えているかどうか、見つめ直す時期に来ているのではないでしょうか。

 

医師や製薬企業と協力して患者さんに投薬していた時代から、患者さんと手を繋ぎ患者さんの目の方向と同じ方向を見て、時には医師や製薬企業と対峙しなければならなくなったのではないでしょうか?

臨床薬学を充実した6年制の確立が世の中の流れではないでしょうか?

 

育星会のホームページを見た時に、飯田社長の冒頭の挨拶で、「カイセイ薬局は『あなたにやさしい薬局、あなたにやさしい薬剤師』を目指す」と書いてありました。「2週間の投薬した患者さんが自宅に持って帰ってから服み始めて2週間の間の空白のフォローを我々がしようではないか」という文面を見、これが会社の方針であるということを確認した時に、物凄く感激しました。「われわれが頓挫したことを、彼は今の時代に合わせて始めようとしているのだ」と感じたからであります。

 

我々の時代に始めようとしたことを少し説明しますと・・・。

       「あなたにやさしい薬局」は、医事課(現推進課)の人たちに患者さんの顔を見たらすぐにお名前を言えるようになってほしい。

       「あなたにやさしい薬剤師」は、薬剤師全員に携帯電話を配り、その番号を薬袋の裏に記入して、あなたの薬は薬剤師の○○が調剤しました。薬の服用している期間に24時間いつでも変化があれば、まずは私○○にお電話下さい・・・と。

 

この運動を始めるべく半年ほど掛けて飯田社長(当時は専務)と一軒一軒の店へ説得に回りました。しかし残念ながら私が退職の時には挫折したままでした。

行き詰った訳は、医事課の名前記憶は個人情報保護の問題が世間で次第に浸透して来た為に、公共の場で名前を呼ぶことが困難になってきた事です。最近の病院の呼び出しや病室の番号を見ればお解かりいただけるでしょう。それまでは、病院に行きますと、病室には名札が貼ってありましたが、現在はありません。全部番号です。病院の受付で名前を呼んでくれるかなと思って待っていますと、番号札を渡され「何番さん」という言い方です。公共の場でのプライバシーの問題なんでしょうね。そういう時代になって来ていますので店頭でお名前を呼ぶ事に躊躇し頓挫してしまいました。

24時間の携帯電話応答は、患者さんの服用している薬について、店を出ると薬暦がないので対応が困難(お薬手帳で少しは緩和)でした。一人一人の薬歴を記憶しておく事は不可能でした。従って、これも行き詰ってしまいました。

ところが、飯田社長に再度打ち出した理由をよく聞いてみますと、今、新しいコンピュータの開発をしており、それが完成すればその悩みは解消されるとの事でした。どこからでもプライバシーを護って薬歴を見ることが出来ますし、患者さんも自分の家で、ゆっくりパソコンを使って自分の薬歴や病歴をみることができるようなシステム(店頭ではゆっくりお話できる時間がない)づくりが始まっているとの事(店頭での服薬指導の形が変わる)でした。そのスタッフに飯田社長も加わって目処がついて来ているようでした。

そのようなコンピュータシステムが出来て、投薬した後のフォローを丁寧に出来る薬局と薬剤師になれば、どのような将来が展開されるのか想像する事が出来ます。患者さんは信頼できる薬局・薬剤師が出来ればそこに処方せんを持って行きます。今、マンツーマンで、「そこしかアカン」と思っていますので、その薬局に行きますが、「自分で信頼できる薬局を選べる」ということが徐々に判れば、一番信頼できる薬局に殆んど持って行くでしょう。そこで、患者さんとの間でコミュニケーションが出来、薬剤師も患者さんから教えられ、患者さんを手本として、患者さんを教師としてどんどん薬剤師としての質が上がります。良い方向に回転します。育星会として全員でそういう方向に進もう、150名の全員が力を結集して進むという迫力たるや素晴らしいものだと考え、今回喜んでお話をさせていただくことにしました。

 

2012/08/31(金) 00:00